デロイト トーマツ グループは12月21日、報告書「Digital Consumer Trends 2022」(日本版)を発表した。同社のテクノロジー・メディア・テレコムインダストリーが全世界22カ国・地域、計38150人、16歳から75歳を対象に実施した調査をもとに、日本独自の考察を加えた。

日本国内のスマートフォン保有率は88%で普及は飽和状態にあり、日本の消費者のスマートフォンにおけるサステナビリティとサーキュラーエコノミー意識は欧州より低く、中古市場は途上段階であることを明らかにした。サステナビリティとサーキュラーエコノミーに関する同報告書の概要は、以下のとおり。

  • スマートフォンにおいて「自社製品のカーボンフットプリントを企業が共有するべきか」の質問に、日本の消費者の25%が「同意する」と回答。欧州の消費者の回答は約57%で、日本と比べて非常に高い
  • 「価格が高くても、カーボンフットプリントが低い機器を購入するか」の質問に日本の消費者は「強く同意する(2%)」、「どちらかといえばそう思う(10%)」と回答した。欧州の消費者は「強く同意する(7%)」、「どちらかといえばそう思う(21%)」と回答した
  • 「中古品を保有している」と回答した日本の消費者は5%、欧州の消費者は約14%で、大きな差がある。欧州ではiPhoneやAndroidなど携帯端末の中古品・整備品専門のマーケットプレイスが存在し、一定割合で普及している。日本では各種規制も影響し、中古品市場は途上段階にあるようだ
  • 新しいスマートフォンを購入する理由として「寿命が長い」と回答した日本の消費者は37%で最も多く、欧州の消費者も24%と高い割合だった。そのほかに、「中古・整備品の携帯電話への信頼度不足(26%)」、「新しい携帯電話が刺激的である(20%)」などの回答があった

(出典:Digital Consumer Trends 2022)
(出典:Digital Consumer Trends 2022)

「自社製品のカーボンフットプリントを企業は共有すべきである」「価格が高くても、カーボンフットプリントが低い機器を購入するか」と回答した日本の消費者の割合が世界平均と比べて低い理由の一つとして、⽇本の消費者がメーカーやブランドによるサステナビリティに関する取り組みに懐疑的であるということが考えられる。粘着材料・ラベル製品メーカーの米Avery Dennison Smartracの調査では、「ブランドのサステナビリティに関する取り組みを信じる」と答えた消費者は、世界平均の45%に対して⽇本は31%となっている。メーカーやブランドは、技術ソリューションなどを活用してサプライチェーンにおける透明性を確保することが求められる。

世界の中古スマートフォン市場は大きな成長が見込まれており、2021年の133億ドルから2026年には440億ドルに達するとデータ分析の英CCS Insightは発表している。その背景の一つとして、EUをはじめとする国々における「修理する権利」などのサステナビリティを推進する施策の導入がある。こうしたことから、現在スマートフォン大手メーカーも、新品製造と比較して炭素排出を大幅削減できるリユース品の販売に参入している。

電子廃棄物と環境負荷を削減するべく、スマートフォンの持続可能なサプライチェーンの構築と中古市場の拡大に向けた取り組みが進められていくことが期待される。

【プレスリリース】デロイト トーマツ「Digital Consumer Trends 2022」(日本版)を発表
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