造形構想株式会社は2月29日、循環するファッションのためのプロダクション「HUMATERIAL(ヒューマテリアル)」をスタートした。「HUMATERIAL」は、「HUMAN(人間)」と「MATERIAL(素材)」を組み合わせた造語だ。

造形構想社は、社会変革と持続可能性のためのデザインを研究、実践するサーキュラーデザインファーム。サーキュラリティを軸としたサービスデザインやUXデザイン、システミックデザインを通じて企業や大学を支援している。

アパレル産業では、環境負荷の低い天然素材やリサイクル素材をつかった商品開発など、製造段階での質の改善が近年進められている。しかし、「環境負荷の低い良い製品がつくられても、大量生産・大量消費の仕組みから脱しない限り、持続可能な社会は遠い」と同社は訴える。HUMATERIALを通じて、服の消費のあり方そのものを見つめ直し、利用段階の改善にまで取り組み、環境負荷の総和を減らすことに挑戦する。

HUMATERIALは、「ブランドから手渡された流れゆく“消費財”として服を一方向に受け取るのではなく、ケアしたり修繕したり、服に自ら関与すること。一方向だけでない服との関係性をもつカルチャーを育み、服を“素材”と捉え直すことで、生活者をつかい手(消費者)からつくり手(生産者)へと変容させること」を目標に掲げる。

プロダクションの旗揚げ人である峯村昇吾氏は、武蔵野美術大学大学院在学中に、アパレル業界の複雑なバリューチェーンを可視化した「サーキュラーダイアグラム」を完成させた。同ダイアグラムは、アパレル産業におけるサプライチェーンとマテリアルフローをサーキュラーエコノミーの観点から研究し、生産、利用、回収・中間処理・再資源化の区分で課題を分析したものだ。

サーキュラーダイアグラム

サーキュラーダイアグラムの制作を通し、「服の大量廃棄から大量回収というシステムへの移行の兆しが見えてきたが、大量生産・大量消費を前提とするのではなく、適量生産・適量消費に変えることが重要。そのためには生活者の消費スタンスの変容が鍵であると考え『HUMATERIAL』の構想に至った」と峯村氏。HUMATERIALを、サーキュラーダイアグラムから描いた構想を社会実装する第一歩と位置付けている。

メンバーには、元オールユアーズ木村まさし氏、nowartt足立豊樹氏らが参画。衣服の循環プロジェクトでの経験や視点を活かし、活動に取り組む。

第一弾として、新たなプリント表現「ヒューマンフットプリント(Human Footprint of Products、HFP)」を発表する。HFPとは既に人々のクローゼットにある服に施すプリントのこと。「二軍の服」に手を加え、服と人との関係性を再構築するワークショップなどを通じて、コレクションを展開していく。

HUMATERIALの成長指標(KPI)として、同社は温室効果ガスの削減量ではなく、HFPをプリントし服の価値を再び巡らせた服の数量に焦点をあてる。温室効果ガス排出量を表示した「炭素の足跡」を意味するカーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products)に対し、HFPは「消費者が消費する存在から少し脱却した『人の軌跡』」の証」だとして、服と人の関係性の転換を提唱する。

【プレスリリース】消費者は生産者になる。持続可能で循環するファッションのためのプロダクション「HUMATERIAL(ヒューマテリアル)」が2024年2月29日スタート、デビューコレクションを発表
【参照記事】HUMATERIAL ティザーサイト
【参照記事】サーキュラーダイアグラム
【関連記事】【全4回】サーキュラービジネスデザイン実践講座 〜サーキュラーエコノミー×デザイン思考を身につける〜
【関連記事】世界のサーキュラーデザイン先駆者は何を見た?crQlr Awards2023 審査員座談会
【関連記事】【イベントレポ】サーキュラーデザイン戦略をカードで学べる「Circularity DECK」体験会
(※画像の出典:造形構想株式会社)