経団連と経団連自然保護協議会は12月12日、生物多様性保全に対する企業の取り組みを深化させるため、「経団連生物多様性宣言・行動指針」を改定、公表した。

近年、生物多様性の喪失に対する懸念を受けて、国内外で生物多様性保全のための動きが活発化している。2022年12月に開催された生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)では、新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)が採択された。2023年3月には、日本政府が「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定。また9月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が開示フレームワークに関する提言を公表した。

GBFと国家戦略には、生物多様性保全における企業の役割が盛り込まれている。GBFが目指す2050年ビジョン「自然と共生する世界」、そして2030 年ミッション「ネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)」の実現に向け、経済界が果たす役割は一層重要なものとなる。

「企業は、脱炭素化、資源循環、生物多様性等の保全・再興などの幅広い環境活動を事業活動の中に取り込んだサステナビリティ経営を推進する必要がある」として、経団連は2018年以来5年ぶりに、経団連生物多様性宣言・行動指針の改定を行った。前回の改定後に起きたコロナ禍や異常気象の影響による危機感も追い風となった。

改定の主なポイントは、GBFを踏まえ「自然と共生する社会」の実現に向けてネイチャーポジティブに貢献する旨を盛り込んだ他、ネイチャーポジティブ経済の実現に向けた企業の役割を明確にした。また、サプライチェーン全体での生物多様性・自然資本への依存・影響やリスク・機会の把握、評価、情報開示、そしてステークホルダーとの対話の重要性を強調している。

経団連の活動方針「サステイナブルな資本主義」では、グリーントランスフォーメーション、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブを統合的に進めていくことを打ち出した。

併せて、これまでの宣言・行動指針の構成を整理し、全体構造(ストラクチャー)の明確化を図った。自然と共生する社会の実現に向けた「企業の役割」と「必要な視点」を明記し、「企業の役割」を果たすための行動指針として9項目を挙げている。

経団連生物多様性宣言・行動指針のストラクチャー

経団連は、2003年に「経団連自然保護宣言」を発表。経済界による生物多様性への取り組みを進化させるため、2009年3月に経団連生物多様性宣言・行動指針を策定した。今回の改定により、日本の経済界による生物多様性保全の取り組みが一層加速することが期待される。

【プレスリリース】「経団連生物多様性宣言・行動指針」を改定
【参考記事】経団連生物多様性宣言・行動指針
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*画像の出典:経団連