経団連自然保護協議会はこのほど、「2030年ネイチャーポジティブに向けたアクションプラン」を採択した。

近年、生物多様性の喪失への懸念は高まっており、世界経済フォーラムが刊行したグローバルリスク報告書2023年版では、「生物多様性の喪失や生態系の崩壊」が今後10年間の深刻なグローバルリスクの4位に挙げられた。こうした懸念を受け、生物多様性保全に向けたさまざまな取り組みが進められている。2022年12月に「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択され、2023年3月には日本政府が「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定した。2023年9月には、自然関連財務情報開示タスクフォース (TNFD)のフレームワークが公表される予定だ。

経団連は「サステイナブルな資本主義の実現」を活動方針に掲げ、「グリーントランスフォーメーション」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」を一体的に推進することを目標としている。生物多様性保全に向けた国際的および日本の目標の達成に貢献するべく、経団連自然保護協議会は、生物多様性の課題に取り組む企業の裾野拡大や取り組み内容の拡充、国際社会を牽引する取り組みモデルの構築を目指し、同アクションプランを策定した。

今後、経団連自然保護協議会は5項目に沿って取り組みを実施する計画だ。5項目は、「経団連自然保護基金による貢献」「ネイチャーポジティブ経営の普及」「円滑なネイチャーポジティブ経営推進のための環境整備」「日本の取り組み発信・海外最新動向の把握」「PDCA(計画・実行・確認・改善)」である。2026年に中間ストックテイクとして、実施状況を評価するとしている。各項目の詳細は、以下のとおり。

  • 経団連自然保護基金による貢献:GBFの2030年目標の達成に資するNGO活動への助成、SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)への拠出、国内外の支援プロジェクト視察による進捗の確認
  • ネイチャーポジティブ経営の普及:GBFなどを踏まえた経団連生物多様性宣言の改定・同イニシアチブの推進、自然関連財務情報をはじめとする情報開示の浸透、OECM(国立公園などの保護地区でない地域のうち、生物多様性を効果的かつ長期的に保全しうる地域 )およびNbS(自然を基盤とする解決策)などGBFや国家戦略の実現に資する取り組みの呼びかけ、J-GBF(2030生物多様性枠組実現日本会議)への協力を含むシンポジウムなどの開催を通じた情報提供と啓発
  • 円滑なネイチャーポジティブ経営推進のための環境整備:企業による円滑なネイチャーポジティブ経営推進のための政策提言、サプライチェーンも含めた生態系への影響把握のための基盤整備、自然関連財務情報開示タスクフォース (TNFD)などにおける適切な情報開示フレームワークの整備、OECMへのインセンティブ付与への取り組み
  • 日本の取り組み発信・海外最新動向の把握:海外動向調査ミッション派遣など(欧州諸国など)、B7(G7各国の経済界の関係者が政策提言する場。日本では経団連が代表団体)でのワークショップの主催などネイチャーポジティブ経済連盟への協力、生物多様性ビジネス貢献プロジェクトなどを通じた事例の発信
  • PDCA:アクションプランの進捗管理・進捗結果を踏まえた改善策の実施、2026年のCOP17で実施されるグローバルストックテイクを見据えた中間評価

生物多様性喪失への取り組みにおいては、サーキュラーエコノミーが大きな役割を果たすとの報告もあり、サーキュラーエコノミーとネイチャーポジティブの推進を目指す経団連が発表した今回のアクションプランが、企業の取り組みを促進し、生物多様性保全に貢献していくことが期待される。

【参照サイト】「2030年ネイチャーポジティブに向けたアクションプラン」を採択・公表
【参照サイト】2030年ネイチャーポジティブに向けたアクションプラン
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