積水ハウス株式会社と株式会社シンク・ネイチャーは7月9日、2030年のネイチャー・ポジティブの実現を目指して、「生物多様性可視化提案ツール」を共同開発したと発表した。2024年6月に開発されたこのツールは、顧客の庭における生物多様性保全効果を最大化するための樹木等を提案するものであり、同社によると建築地ごとに植栽樹種の組み合わせをシミュレーションできる世界初のツールだという。2024年7月時点で、1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)で試験運用を開始しており、今後の全国導入を目指す。
この取り組みの背景には、2022年12月のCOP15で設定された2030年までのネイチャー・ポジティブ実現という国際目標がある。
積水ハウスは、2001年から地域の気候風土に適した在来樹種を植栽する「5本の樹」計画を推進。琉球大学理学部久保田研究室及びシンク・ネイチャーと共同で同計画の効果を検証し、都市の生物多様性を定量評価する「ネイチャー・ポジティブ方法論」を構築し公開した。これにより、「5本の樹」計画が生物多様性回復に貢献する科学的エビデンスを得ることができたという。
同ツールは、積水ハウスの庭木セレクトブックの樹種データを収録しているほか、シンク・ネイチャーの生物多様性ビックデータを活用。同ツールを用いることで、住宅設計担当者は住宅の設計段階から生物多様性保全効果を可視化した植栽提案が可能となることから、従前の提案と比較して約2.6倍の効果が見込まれている。また迅速に植栽樹種の組み合わせを顧客に提案できることから、外構提案の顧客満足度向上にもつながると期待される。
積水ハウスは、 「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というグローバルビジョンのもと、ESG経営を進めている。その一環として「5本の樹」計画を通じて地域の気候風土に適した在来樹種を植栽しており、2001年からの累積植栽本数は2,000万本に到達。
シンク・ネイチャーとの共同検証により、「5本の樹」計画開始前の2000年を基準として、2030年には37.4%、2050年には40.9%、2070年には41.9%まで生物多様性を回復できると同社は予測している。
【プレスリリース】積水ハウスとシンク・ネイチャー 生物多様性可視化提案ツールを共同開発、試験運用開始~住宅の植栽提案でネイチャー・ポジティブの効果を可視化~
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