積水ハウス株式会社と株式会社シンク・ネイチャーはこのほど、「生物多様性ネットゲイン(純増)※」と算出方法の標準化に向けて共同推進する連携協定を締結した。

2030年のネイチャーポジティブ実現に向けて、積水ハウスの生物多様性の取り組み「5本の樹」計画やシンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータ、AIなどを活用する。

取り組みとして、「生物多様性ネットゲイン」につながる住宅建設に関する新たな商品・サービス・事業モデル、その他の実現アイデアの創出および啓発活動を実施。現在検討中の取り組みには、住宅建設予定地での植栽提案において、「生物多様性ネットゲイン」を最大化できる植栽の樹種・本数のシミュレーション提案ツールを2024年春頃に導入することなどがある。


両社が提携協定を締結した背景は、世界における生物多様性の保全・再生への取り組み加速だ。2022年12月に開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、世界的な自然保護目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択。2030年までに、陸域と海域の30%以上を保全することなどが目標として定められた。2023年9月には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言が予定されている。

日本政府も、ネイチャーポジティブについて令和5年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書で言及しており、ネットゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブを同時に達成することを目指している。

2001年、積水ハウスは「5本の樹」計画を開始した。「5本の樹」計画は、都市の住宅地に地域の在来樹種を中心に植栽し、生物多様性保全・再生を推進する活動で、累計植樹本数は1900万本にのぼる(2023年1月現在)。積水ハウスは同計画の効果を琉球大学とシンク・ネイチャーと共同検証し、都市の生物多様性の定量評価の仕組みを「ネイチャー・ポジティブ方法論」として2021年に公開した。検証では、「5本の樹」計画開始前の2000年と比較して、2030年に37.4%、2050年に40.9%、2070年に41.9%まで生物多様性を回復できると予測されている。

今回の提携協定では、同方法論を発展させて、住宅地への植樹などの緑化を通じた「生物多様性ネットゲイン」と算出方法の標準化を推進することを目指す。積水ハウスは、同取り組みを通じて生物多様性回復のための数値的目標を設定し、ESG経営を牽引していきたい考えだ。

※ 生物多様性ネットゲイン:住宅地や開発地における生物多様性保全に留まらず、生物多様性回復に向け生物多様性を増やすこと

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*冒頭の画像右は、生物多様性ネットゲインイメージ図。記事中の画像の出典:積水ハウス株式会社、株式会社シンク・ネイチャー