日本政府はこのほど、令和5年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書を閣議決定した。3つの白書は国会に提出する年次報告書であるが、環境問題の全体像を明示するために平成21年版から合冊されている。

「ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブの統合的な実現に向けて~環境・経済・社会の統合的向上~」が、令和5年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書のテーマだ。

3つの白書は世界が直面する社会課題に対して、地域循環共生圏の構築やグリーントランスフォーメーション(GX)をはじめとする取り組みを加速することで、ネットゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブを同時に達成し、環境・経済・社会の統合的向上につなげることを目指す。気候変動や生物多様性喪失などの現状と国際動向を踏まえて、次のような取り組みを紹介している。

  • 持続可能な経済社会システムの実現に向けて、ネットゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブへの取り組みは相互に関連していることから、3つの同時達成に向けた統合的な取り組みを紹介
  • ネットゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブの同時達成には、地域や住民の暮らしを豊かさやウェルビーイングにつなげていくことが重要だ。そのための取り組みである「地域循環共生圏」や生活形態の転換などについて紹介
  • 東日本大震災や原発事故の被災地の環境再生に向けた取り組みの進捗や、復興の新段階に向けた未来志向の取り組みを紹介

3つの白書の目次は、下記のとおり。

令和4年度 環境の状況
令和4年度 循環型社会の形成の状況
令和4年度 生物の多様性の状況

第1部 総合的な施策等に関する報告

第1章 気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向
第2章 持続可能な経済社会システムの実現に向けた取組
第3章 持続可能な地域と暮らしの実現
第4章 東日本大震災・原発事故からの復興・再生に向けた取組

第2部 各分野の施策等に関する報告

第1章 地球環境の保全
第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組
第3章 循環型社会の形成
第4章 水環境、土壌環境、地盤環境、海洋環境、大気環境の保全に関する取組
第5章 包括的な化学物質対策に関する取組
第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策

令和5年度 環境の保全に関する施策
令和5年度 循環型社会の形成に関する施策
令和5年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策

第1章 地球環境の保全
第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組
第3章 循環型社会の形成
第4章 水環境、土壌環境、地盤環境、海洋環境、大気環境の保全に関する取組
第5章 包括的な化学物質対策に関する取組
第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策

今回の3つの白書の特徴の一つは、ネイチャーポジティブへの言及だ。近年、生物多様性喪失への懸念は高まっており、生物多様性保全に向けたさまざまな取り組みが進められている。2022年12月に「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択され、2023年3月には日本政府が「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定。2023年5月30日から6月2日まで開催された世界循環経済フォーラム2023では、自然と経済のための循環型ソリューションを推進する活動に焦点が当てられた。2023年9月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークが公表される予定だ。

生物多様性喪失への取り組みにおいては、循環経済が大きな役割を果たすとの報告もある。循環経済とネイチャーポジティブ、およびネットゼロの実現を目指して作成された3つの白書などを参考に、国民・企業・地方自治体・国が共同で取り組み、相乗効果が生まれていくことが期待される。

【参照サイト】令和5年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の公表について
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