2022年3月14日、横浜市は横浜型リビングラボの活性化とサーキュラーエコノミーの推進に向け、横浜市外の企業を対象とした地方創生応援税制(以下、「企業版ふるさと納税」)の制度を確立した。本制度は、横浜市の令和4年度予算事業の一つに位置付けられる。

企業版ふるさと納税 策定の背景

横浜市は2018年に「SDGs未来都市」に選定されて以降、SDGsの取り組みを進めている。そのなかで課題となっているのが、抽象的な理念であるSDGsをどのように具体的な施策や事業に落とし込み、その効果をいかに検証していくかという点だ。

他方、政府は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を2020年10月に宣言している。

横浜市議会はこのような社会経済の背景を受けて、2021年6月に全国初の「横浜市脱炭素社会の形成推進に関する条例」を制定した。この条例では、「循環型経済(サーキュラーエコノミー)の推進」は、「再エネ・省エネの推進」とともに、横浜において脱炭素社会を形成するための車の両輪として位置付けられている。

2022年現在、横浜市では市内の中小企業が中心となり、NPO法人や大学等と連携し、社会課題をビジネスの手法で解決する「リビングラボ」の取り組みが広がっている。そして、各地のリビングラボの活動の指針として提唱しているのが「サーキュラー・エコノミーplus」だ。

SDGsの17の目標すべてをバランス良く達成するために、リビングラボを運営する民間団体が対話を重ね生み出した独自のビジョン 「サーキュラーエコノミーplus」

一般的なサーキュラーエコノミーが資源・製品のリサイクルを中心に展開しているのに対し、「サーキュラー・エコノミーplus」では、資源や製品に限らず、「ひと」と「まち」の持続可能性とエンパワーメントにも着目し、それらを総合的にプロモーションするための社会経済モデルを構築し、「誰一人として取り残さない持続可能な未来」を目指す。

横浜型リビングラボについて

リビングラボとは、まちの主役である住民(生活者)が、暮らしを豊かにするためのサービスやものを生み出したり、より良いものにしていくことを目指す新しい地域・社会活動。「Living(生活空間)」の「Lab(実験場所)」という名前の通り、市民が主体となったオープンイノベーションの拠点となっている。

横浜型リビングラボでは特に、市内各地域が抱える地域課題を解決するための拠点として機能している。2022年3月までに、およそ15のリビングラボが立ち上がり、少子高齢化や女性のエンパワーメント、空き家や休耕地の利活用など、地域特有の課題に向き合う様々な活動を展開している。

横浜型リビングラボの活動詳細は、一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィスのウェブサイトをご覧ください。

企業版ふるさと納税 寄附の概要

企業版ふるさと納税を通じた寄附は、次の取り組みに活用される。

  • 「サーキュラー・エコノミーplus」の具現化に向けたプラットフォームの構築(リビングラボ活動の見える化)
  • 情報発信力の強化や事業化支援など市内各地のリビングラボの活動のエンパワーメント
  • 横浜版の地域循環型経済のあり方を象徴するようなビジネスモデルの開発や拡充

本制度の対象は横浜市外に本社(地⽅税法上における主たる事務所及び事業所)が所在する企業。寄付に際しては、初めにメールまたは電話にて横浜市への相談が必須。その後、企業版ふるさと納税としての受入れが承認されると、正式な寄附の申し出が可能となる。

【参照サイト】一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス
【参照サイト】横浜市|【令和4年度予算事業】横浜型リビングラボに対する機能強化事業
【参照記事】横浜市|共創ラボ・リビングラボ

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Circular Yokohama」からの転載記事です。