Circular Economy Hub 編集部では、7月から第一木曜日夜に「サーキュラーBar」、第三木曜日昼に「サーキュラーCafe」として、コミュニティ会員だけが視聴できるラジオのようなオンラインの場をスタートさせました。皆さんでコーヒーやビールでも飲みながら「ああでもない」「こうでもない」とざっくばらんにお話する形式で、いつもサーキュラーエコノミー(以下CE)についてのニュースやレポートを追いかけている中で抱いた「そうは言っても、これってどうなんだろう?」という違和感や直感をもとに、皆さんで議論を広げています。

先日は私が「サーキュラーエコノミーのシステムチェンジを実現するためのアプローチとは?」というタイトルを設定し、参加者同士で議論を交わしました。

静脈がデザインされていないことがCE実現の妨げに

最近、サーキュラーエコノミーについて考えれば考えるほど、疑問に思うことがあります。たとえ製造過程でリサイクル素材を使ったり、修理して使い続けたりというように動脈部分のシステムをサーキュラー化したとしても、静脈部分の回収・収集システムをサーキュラーな形で確立させないと結局は廃棄に回ってしまうので、サーキュラーエコノミーを推進する意味がなくなってしまうのではないか、と。静脈のシステムチェンジを実現するために、動脈も含めてどのようなアプローチが求められるのか――。私からの投げかけとともに、皆さんの知恵をお借りしながらご一緒に考えていきました。

お気に入りのマンハッタンポーテージのリュックとメッセンジャーバックが壊れたので、先日修理に出してまた使えるように。ただ、こうやって大切に使ってもいつかは…。その時、私の住む場所では「不燃ごみ」としてシュレッドされて最終処分場に出されてしまいます
愛用しているドイツ生まれの食器洗い洗剤「フロッシュ®︎」。界面活性剤は植物油脂が主原料ということもあってか手荒れが全くなく、高い生分解性(排水から約20日間で98%が生分解)も愛用の理由です。こうした環境への思いから、ボトルが100%再生プラスチック製となったのも頷ける。しかし、これも使い終わったら自治体のプラごみとして分別収集され、欧米ではリサイクルとはみなされない燃料活用(サーマルリサイクル)に終わってしまう

私からご紹介させていただいた上記のエピソードは、動脈(製造時)ではリサイクル素材の活用や容器包装の削減などさまざまな取り組みが顕在化してきたものの、静脈(収集廃棄時)が国や地域や商品の流通チャンネルによってバラバラな状態でデザインされておらず、これがCEの実現を妨げていることを物語っています。

さて、どうすればいいのでしょうか。

もちろん、自ら循環の輪に入る、輪を作り出すという自給自足的なあり方をそれぞれのレベルで追求する必要があります。コロナ禍のステイホームで自宅から出る生ごみの多さに改めて気づいた人たちの間でコンポストをする人が増え、メディアで取り上げられる時代にもなりました。

一方で、消費社会と無縁ではない私を含む多くの人々にとっての“次善の策”として、製造から廃棄まですべて面倒を見るようなサービス提供のあり方を、いよいよ真剣に確立すべき局面に来ているのではないかと思うのです。

動脈と静脈のシステムチェンジ、お互いの協働の余地は?

動脈のシステム変革の方向性を示唆するのは、EUのエコデザイン指令です。製品の設計から製造、梱包、輸送、使用から廃棄に至るまで、ライフサイクル全体を通して資源消費量や汚染物質排出量を削減することを目的とするこの枠組みは、21世紀の経済システムのスタンダードになることでしょう。メーカーでは、できるだけ使用する素材の種類を減らすことでリサイクルしやすい製品を開発する動きも出始めています。

【参照記事】【談論風爽レポート#2】CEはなぜEcoDesign指令に向かうのか

販売プロセスに目を向けてみると、すでにLoopのような形で静脈システムをサービス化するビジネスが生まれ、日本でも徐々に存在感を高めています。

【参照記事】イオン、国内小売初「Loop」商品を首都圏19店舗で販売開始へ

我が家では週に1回生活協同組合の宅配にお世話になっています。いずれも紙製の牛乳やヨーグルト、卵のパックは回収してもらいます(瓶も回収してもらえます)。かつては産地直送という形で生産過程の安全を実現してきた生協は、コロナ禍を経て循環の安心という新たな価値の提供も求められています

ちなみに、先日のサーキュラーCaféでは「量り売りがもっと見直されてもいいよね」という話にもなりました。レジ袋の有料化でマイバッグの持ち歩きが習慣化してきた今、容器を持っていくハードルは以前よりも下がっているのではないでしょうか。大手スーパーが、街に広がるコンビニが、量り売りを始めたら――。消費者に割引やポイントなどのインセンティブを与えながら、大手ならではの仕組み化に期待したいところです。

と思っていたら、今年で20周年を迎えるナチュラルローソンが7月8日から東京都内の5店舗でドライフルーツやナッツ類の量り売りを新たに始めました。これまでも一部店舗で洗剤やシャンプーなどの量り売りを実施してきましたが、品目を拡大した形です。

一方、静脈側でも付加価値の高いリサイクルの実現につなげようと、素材の選別技術の向上に取り組む動きも見られます。その際にカギとなるのが、廃棄物収集・処理の広域化です。現状では自治体単位の許認可事業ですが、広域化することで収集できる廃棄物量が増えますので、設備の高度化に取り組める余地が広がります。広域化に対応できる経営体力を持てるよう、廃棄物処理業者の経営統合を通じた静脈メジャー化が日本でも加速するかもしれません。

【参考記事】
未来からの宿題|高度循環型社会づくりへの挑戦【前編】
未来からの宿題|高度循環型社会づくりへの挑戦【前編】

廃棄物に精通しているアドバンテージを活かして、CEにつながるビジネスをメーカーに提案したりコンサルティングしたりすることも、静脈側にとってのビジネスチャンスです。廃棄物処理のナカダイとデザインコンサルティングのOpen Aによるアップサイクルのプラットフォーム「THROWBACK」が、パナソニックと協働して家電廃棄物から家具や照明を作り出す「*リバリュープロジェクト」を行っているのは、そんな一例です。

*【リバリュープロジェクト参照記事】ビジネスを通じて新たな循環価値を創造する ~パナソニックが進めるサーキュラーエコノミーとは?~

1社だけ、業界内だけの「部分最適」を超えて

たとえリサイクル素材を使っても、リペアしたとしても、収集・廃棄以降の静脈のシステム変革が起こらないとCEの意味がないのではないかーーというのが、今回のテーマの出発点でした。システム変革は一朝一夕に実現できるものではありませんが、だからと言ってCEは無意味であると結論づけるつもりはありません。一企業だけ、製造プロセスだけといった部分最適でCEを完結させるのではなく、CEとは動脈と静脈、上流から下流までのシステム全体の変革を必要とするという認識に立つことからまずは始めたいものです。

ご視聴ありがとうございました!

仕事の合間にお耳をお貸し下さった会員の方々や、日ごろはリモートでなかなか顔を合わせる機会のない中でご一緒している編集部メンバーと楽しくお話させていただいたサーキュラーCafe。今の生活スタイルですと、私はカフェ担当がメインになりそうです。コロナ禍で多くの皆さんがテレワークとなる中で、ふと浮かんだ疑問やアイデアを相手にぶつけながら洗練させていくブレストの機会が減っていることに難しさを感じている方々が少なくないかもしれません。サーキュラーCaféは、そんな時代に所属や組織の枠を超えたランチブレストの機会にもなればと思っています。

サーキュラーCafé&Barは、ラジオのように画面を見ずに聞くだけでも、お好きな形でご参加いただけます。コミュニティ会員の方々は、過去のアーカイブもご覧いただけます。

それでは、サーキュラーCafé&Barでまたお会いしましょう。

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