1. EUバッテリーパスポートの開発状況は?

EU電池規則が義務付けるバッテリーパスポートは、2027年2月から導入される予定だ。そのため、欧州ではバッテリーパスポートの実装に向けた準備が進んでいる。EU市場で取引される一定の電池に必要となるバッテリーパスポートは、今後エコデザイン規則(ESPR)のもと段階的にEU域内で導入されるデジタルプロダクトパスポート(DPP)の初のユースケースとなる。そのため、バッテリーパスポートの構築を通じ、今後のDPPの基礎基盤が現在形成されつつあるともいえる。

EU規制要件下のバッテリーパスポート開発における大きな特徴は、DPPの実装という一つの共通目的に向け、それぞれ開発に関わる団体・組織が一体となったネットワークが形成されていることである。もともとバッテリーパスポートの概念は、世界経済フォーラムで提唱されて、2017年に結成したグローバル・バッテリー・アライアンス(以下GBA)が、サステナブルな電池の推進を目的として、2019年にEUに先駆けて世界へ提案したものだ。こうした背景から現在のバッテリパスポートの概念は、GBAによるものが基本となっており、同組織はバッテリパスポート開発の基礎を提供したといえる。

2. 相互運用性を確実なものに

バッテリーパスポートを発端としたDPPの開発が議論され始めた段階から、産業界をはじめとする関連ステークホルダー間で、開発における調和化・標準化の必要性が唱えられていた。特にESPRで要件化されるDPPは、グローバルに広がるバリューチェーン上のあらゆる製品が対象となるため、独自の技術やフォーマットによる開発があちこちで先行し、相互運用性への支障が起きることが懸念されていた。そのため、バッテリーパスポート開発を着手する際、企業が単体で開発するのではなく、電池バリューチェーン上のステークホルダーが集結し、コンソーシアムなどのグループが形成された。その結果、異なる分野の事業者が協力し合い、多数の実証プロジェクトがバリューチェーンを網羅して実施されることになった。さらに、開発に従事する組織は、先駆けて開発された定義や方法論に基づきさらなる開発を行うことで、焦点が重複し異なる結果が生まれることを避けている。

適用まで残るところ2年を切ったバッテリーパスポートは、これまでに実証プロジェクトの中でその概念が実証され、成果物の大部分が無料で公開されている。バッテリーパスポートの主要プロジェクトにおけるもう一つの大きな特徴は、開発に関わる団体・組織は、提携企業間のみによるプロジェクトの商業化を意図としていないことだ。開発における目的は、これまでに存在しなかったDPPを、EU電池規則の要件に従い、電池のサステナビリティを推進するツールとして運用するための指針を作成するというものである。これには概念自体が実行可能かどうかについて、バリューチェーン上の事業者が参加することで実証することも含まれている。そのなかで、障壁や利点を分析しながら実装が可能なことを証明し、デジタルパスポートモデルの実例を示すものでもある。これらの組織・団体が目指したのは、定義やデータ属性におけるバッテリーパスポートのシステムを例示することで、実装を担う企業がそのモデルに従い、調和化を実現することである。

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