循環型の電子機器の推進を担うグローバル企業によるパートナーシップであるCircular Electronics Partnership(CEP)はこのほど、電子機器におけるサーキュラーエコノミー移行に向けた考え方を整理したレポート「Circular Electrics System Map ~ An industry blueprint for action~ 」を発表した。循環型経済システムに即した電子機器とは何かを定義するとともに、循環型の電子機器を可能にする各種システムのあり方について提示している。

1. 570億ドル相当の物質的価値をどのように活用するか?

情報通信技術(ICT)部門は、他の大規模産業と同様に相当量の温室効果ガスを排出している。2040年には、世界の温室効果ガス排出量のうちICT部門からの排出量は全体の約3%から約14%に増えることが見込まれている。加えて、電子製品の廃棄に伴う環境・社会上の課題もさらに深刻度を増している。世界では、2021年だけでも推定5700万トンの電子製品が廃棄され、その量は地球上で最も重い人工物体である中国の万里の長城よりも重いのである。さらに重要なのは、廃棄された電子製品の20%未満しかリサイクルされず、残りは埋め立て地に捨てられることで、特に発展途上国のコミュニティで深刻な健康被害を引き起こしているのだ。

さらに、業界はリチウムなど電子製品の製造に不可欠な資源供給の悪化という経済面での課題にも直面している。

例えば、リチウムは2021-22 年の間に価格が 500%値上げされた。こうした金属資源は有限であり、電子製品を無限に生産する市場の不確実性を高めることにつながっている。

電子機器をめぐるこれらの環境、社会、経済的なリスクを軽減するのがサーキュラーエコノミーである。サーキュラーエコノミーへの移行は、財務面でも機会となる。世界の電子廃棄物の物質的価値は570億ドルに上り、大半の国々のGDPを上回る。企業は新しい循環型ビジネスモデルを採用することで、この価値の可能性を活用でき、バリューチェーンに沿った製品ライフサイクルを最大化することができる。

エレクトロニクス業界のサーキュラーエコノミーへの移行の必要性は認識されてきた一方で、循環型経済システムに即した電子機器の定義や循環型の電子機器を可能にする各種システムのあり方についてはいまだ不透明なままだ。そこで、CEPの加盟組織とアクセンチュアが共同してこれらについての共通理解を構築する目的で本レポートを作成したとしている。

第1章では、循環型の電子製品を3つの属性に基づいて定義づけ、製品とその材料のライフサイクル全体が循環的であると見なされるために何が起こるべきか説明されている。第2章ではこの見方をさらに広げて、製品が循環するためのサポートシステムの重要性について概説している。第3章では、まだ実在していない循環型製品を可能にするシステムとはどのようなものになるかをめぐって、将来を展望しながら循環型システムを可能にする12の重要な事柄を提示している。

2. 循環型の電子製品とは何か?~3つの属性に基づく定義

CEPは、製品の物質的価値の一部が製品の使用状況や耐用年数が終了した時点での取り扱われ方に依拠するため、現状では製品が循環的であるとみなせるかどうかという質問への答えの結論を出すことはできないと指摘。その上で、Circular Transition Indicators (CTI)やCirculytics、Cradle to Cradleなど現在広く使用されている循環性の測定フレームに沿った測定を行いながら、次の3つの属性が当てはまる場合に限って製品が「真に循環的である」と見なされると説明している。

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