目次
- 現行の「電池指令」改定への背景
- 法案作成までの過程 (以降、有料会員閲覧可)
- 欧州委員会が提案する13件の改定項目
- 電池のバリューチェーン全体を扱う
- 新電池規則の目指すものと業界の意見
- 電池製造過程におけるカーボンフットプリント開示
- 電池の二次利用
- 回収率目標
- 再生材利用の義務化
2020年12月に欧州委員会が発表した「EU電池規則案」は、EUが推進する欧州グリーンディールおよびその中核を成す循環型経済行動計画に基づき、「欧州におけるサステナブルな電池の生産」の推進を目的としている。本記事では、EU電池規則案の概要と業界内での反応を解説する。
現行の「電池指令」改定への背景
現行の電池指令は、EU規制の中では唯一電池のみを取り扱うもので、電池と廃電池の環境への負荷を最小化するという目的で設置された。主な焦点は、廃電池の回収とその処理の最適化に当てられている。しかし、今回の改定案では、環境負荷へのリスクは、使用済みとなる電池だけでなく、電池のライフサイクル全体において存在するものとした。これにより、規制の適用範囲が大幅に拡大されることになった。
電池は、EUにおける温室ガス排出のおよそ4分の1を占める輸送部門の電化に欠かせない戦略的製品とされており、今回の改定への提案の背景には、電池の開発と生産はクリーンエネルギーへの移行に際し必然的なものであるとの認識がある。そのため、電池自体の高い環境配慮性が必須だ。新法案は、その枠組みを供給するよう設計されている。また、規制により、欧州における持続可能な電池の生産および革新的なリサイクル技術への投資を活性化させる狙いもある。
昨年発表された改定案の内容は、2022年に予定されている欧州議会と閣僚理事会による投票を前に最終調整に入っている。成立すれば、現行の「指令」からEU加盟各国で直接拘束力のある「規則」となる。ここでは、欧州委員会の法案をもとに、新電池規則の内容を紹介する。
この記事は、Circular Economy Hub 会員専用記事となります。
会員種別と特典
藤原 ゆかり
欧州在住フリーライター/リサーチャー。EUの政策・規制、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および調査に携わっている。専門分野:EU環境政策・規制。イギリスの大学院で戦争学、国際関係学を学ぶ。趣味は旅行と油絵。