旭化成株式会社はこのほど、ベンチャーキャピタルの蘭Brightlands Venture Partnersと蘭4 Impact VC、およびエネルギー企業のNeste(本社フィンランド)と共同で、蘭Circulariseへの出資参画を決定した。4組織による出資金額の合計は1100万ユーロ(約15億8000万円)で、Circulariseは産業サプライチェーンのサーキュラーエコノミー移行に向けて同資金を使用する。

Circulariseが掲げる使命は、サーキュラーエコノミー移行に不可欠なサステナビリティ関連情報を共有することだ。ブロックチェーンと「ゼロ知識証明※1」を活用した「Smart Questioning技術※2」をもとに、匿名性と透明性を両立させた信頼性の高いデジタル製品パスポート(DPP)とサプライチェーン管理システムの開発を進めている。

これらの技術を用いると、サプライチェーン上の各ステークホルダーの情報の機密性を保ったまま、原料、リサイクル履歴、バイオマス・リサイクル比率、カーボンフットプリント、第三者認証などの情報をサプライチェーン上で追跡できる。同技術は、化学・プラスチック・金属・重要な原材料・自動車・電子機器・容器包装・建設などのさまざまなサプライチェーンに適用できるとCirculariseは発表している。DPPについては、現在その動向が注目されており、欧州委はDPPがサーキュラーエコノミー移行の一翼を担うとみて、エコデザイン規則における対象製品群のすべてにDPPを適用することを目指している。

2016年に設立されたベンチャー企業であるCirculariseは、日本をはじめ世界で市場を拡大しており、自動車サプライチェーン全体の情報共有および透明性や持続可能性の向上を目指す自動車業界のアライアンスCatena-Xにも参加している。加えて、旭化成株式会社、丸紅株式会社、三菱ケミカル株式会社、Neste、化学大手の米LyondellBasell、家電のPhilips Domestic Appliances、独ポルシェ、化学大手のTrinseoなど多国籍企業と提携し、産業サプライチェーンのサーキュラーエコノミー移行に向けてさまざまな実証を展開中だ。

旭化成グループはCirculariseへの出資を通じて、信頼性と透明性を担保したサプライチェーンのデジタルプラットフォーム構築に参画し、サーキュラーエコノミー移行に貢献していきたいとしている。

※1 ゼロ知識証明:ある知識を持っていることをその知識に関する情報を一切開示せずに証明できる技術
※2 Smart Questioning技術:ブロックチェーン技術とゼロ知識証明技術を利用してCircularise社が独自開発した技術

【プレスリリース】オランダ・Circularise社への出資参画について
【プレスリリース】Circularise secures €11M in funding from Brightlands Venture Partners, Asahi Kasei, Neste, 4impact and others
【関連記事】ネステ、蘭サーキュライズ社と提携。循環型ポリマー・化学品バリューチェーンの透明性向上を目指す
【関連記事】蘭Circulariseと米LyondellBasell、デジタル製品パスポートプロジェクトを開始
【関連記事】ISCCとCircularise、企業10社と共同でブロックチェーンシステムの実証実験を開始。ISCC Plus認証審査の補完が目的
【関連記事】旭化成、デジタルプラットフォーム構築プロジェクト実証実験の結果を発表
【関連記事】丸紅、蘭サーキュライズ社と業務提携。サーキュラーエコノミー実現に向けたプラットフォームをアジア展開へ
【関連記事】【連載② 欧州委が発表した「持続可能な製品イニシアチブ」。その意図と課題、日本への示唆】デジタル製品パスポートが意味すること
*冒頭の画像の出典:旭化成株式会社