旭化成株式会社はこのほど、プラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics®(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy)」において、産業廃棄物や工場から排出される不要となったプラスチック(以下、産業系廃棄物)を対象とした再生プラスチック利用促進システムの開発を開始すると発表した。

BLUE Plasticsは、ブロックチェーン技術を活用してリサイクルチェーンにおけるデータ改ざんを防ぎ、トレーサビリティを担保できるプラットフォームで、旭化成株式会社が2021年度に発足させた。BLUE Plasticsの目標は、「リサイクル社会実装基盤の確立」「消費者を巻き込んだ文化醸成」「リサイクル素材利用促進」である。

同システム開発にあたっては、旭化成株式会社が参画する日本プラスチック工業連盟の会員リサイクラーと共同で、再生材のモノづくり現場で使いやすいシステムの構築を目指す。2022年秋以降に、同システムを用いた実証実験を実施する予定だ。実証では、協働するリサイクラーの既存再生工程においてシステムを実際に稼働させ、作業フローやデータ管理など、現場での観点から価値を検証する。将来、同システムは同業他社問わず誰もが活用できるデジタルプラットフォームとして公開する計画だ。

同システム開発の背景は、以下である。日本は2019年に策定した「プラスチック資源循環戦略」において、2030年までに国内における再生材の循環量を倍増させることを目標として掲げている。再生材循環量を増加させるには、「トレーサビリティの確保」「品質情報の提供」「取引実績や認証情報などの提供」の3要件が必要であると旭化成株式会社は考える。これまで、同社は一般消費者向けのプラットフォームにおいて「トレーサビリティの確保」を推進する取り組みを展開してきた。今回の再生プラスチック利用促進システム開発において、「品質情報の提供」と「取引実績や認証情報などの提供」への取り組みを進めていくとしている。

旭化成株式会社は、同システムが貢献する産業系廃棄物の再生材に関する課題について次のように発表した。

  1. 再生材の明確な出所情報提供(ブロックチェーン技術を使ったトレーサビリティの確保):同システムは一般消費者向けのプラットフォームと同様に、ブロックチェーン技術を応用して再生プラスチックが正しくリサイクルされていることを証明する。各サプライチェーン企業は各工程において、これまで個別のデータベースやファイルに入力していた材料再生に関する情報をシステム内に入力すると、サプライチェーン上の産業系廃棄物の流れやリサイクルにおける再生割合を1つのシステムで確認できる
  2. 安心して再生材を利用するための明確な品質情報提供(品質情報の提供):トレーサビリティの確保と同時に、再生材の品質情報を提供する。これにより、再生材の販売者・購入者・最終製品の消費者は安心して品質が明確な再生材を販売・購入・使用できる
  3. サプライチェーン企業間の取引促進のための情報提供(取引実績や認証情報などの提供):各取引環境に適した情報をリサイクル証明と同時に発信する仕組みを取り入れる。リサイクラー以降のサプライチェーン企業が安心して取引できること、再生材を安全・安心に流通させることが資源循環社会を創造する最大の解決方法である

今後、旭化成株式会社は同システムの開発を通じて、産業系廃棄物業界におけるリサイクル率・リサイクルチェーンの可視化によるリサイクル証明手法を確立し、国内外におけるプラスチック資源循環を推進していく意向だ。同実証が、BLUE Plasticsの目標の一つ「リサイクル素材利用促進」達成に寄与することが期待される。

【プレスリリース】資源循環プロジェクト「BLUE Plastics®」において産業系由来の再生プラスチック利用促進システム開発を開始
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*冒頭の画像の出典:旭化成株式会社