英国気候変動委員会(Committee on Climate Change)はこのほど、英政府に向けて、気候変動対策と新型コロナ危機からの経済復興に同時に取り組むための新しい提言を発表した。

この提言は、今年5月に英首相へ送られた提言をさらに詳しく説明したものであり、英議会に向けた年次レポートとして発表された。二酸化炭素排出実質ゼロへの移行を加速し、経済復興を実現するための政策提言が盛り込まれている。

同レポートは、今後数カ月の間に早急に実施すべき以下の5つの投資優先順位を強調している。

  1. 建築物の低炭素化
  2. 植林や泥炭地の回復、クリーンインフラ構築
  3. 交通や暖房システムの電動化支援を通じて、エネルギーネットワークを強化する
  4. 徒歩やサイクリング、リモートワークのためのインフラ構築
  5. サーキュラーエコノミーへの移行

これらの提言を通じて、経済復興は当然のことながら、公衆衛生の向上や生物多様性の保全、大気環境の改善、快適な住環境、労働の生産性向上を実現する目的がある。

サーキュラーエコノミーへの移行に関しては、分別システムが構築されれば、今後5年以内にリユースやリサイクルを急速に促進することになるだけでなく、生分解性廃棄物を埋立処分しないようにすることが可能になるとしている。そのため、地方自治体が、分別回収やリサイクル設備のインフラ投資、地域の雇用創出支援を必要としていることを訴えている。

同レポートは、低炭素社会へ移行するための再教育や、リモートワークやサイクリングなどの低炭素型習慣へのアプローチ、コロナ禍におけるイノベーションや研究開発にも機会があると指摘している。

同委員会委員長のデベン卿は、「英国は今、深刻な経済危機に直面しています。 一方で、世界的な気候危機がますます深刻になっています。英国が新型コロナ危機から再建するために取るべき行動は、低炭素経済への移行を加速し、気候変動に対するレジリエンスを向上させることです」と述べた。

英国はこれまでにも高い目標を掲げ、気候変動対策に取り組んできた。2018年から2019年にかけて英国の二酸化炭素排出量は3〜4%削減され、2008年から2019年にかけて30%の削減を実現している。

5つの投資優先順位の一つに挙げられているが、サーキュラーエコノミーが気候変動対策に果たす役割は大きい。新型コロナウイルス感染症の蔓延によるかつてない経済危機に対処しなければならない今、よりグリーンな復興を目指す英国の取り組みに期待したい。

【参照記事】COVID-19 can be an historic turning point in tackling the global climate crisis
【参照記事】
Letter: Building a resilient recovery from the COVID-19 crisis to Prime Minister Boris Johnson