一般社団法人中部経済連合会(中経連)はこのほど、提言書「自立分散かつ循環型社会の形成に向けて~『カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会の変革』を推進するために~」を発表した。

同提言書は、2020年度と2021年度に中経連が作成した提言書「コロナショックからの教訓と経済社会の変革」および「カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会の変革」を踏まえて作成された。

今後、中部圏として実践すべきことに対し、産学官で連携して主体的に行動していくことを同提言書は呼びかける。加えて、政府・経済産業省・環境省などの関係省庁および国会議員、国の出先機関・地方自治体・大学・経済団体などにも提言していくとしている。中経連が今回発表した内容は、以下のとおり。

自立分散かつ循環型社会の形成を目指す同提言書は、効率化・レジリエンス向上・快適性・利便性・資源の有効活用・多様化する需要への対応において、各組織のあるべき方向性と取り組み状況、課題および求められる行動変容をまとめた。

提言書の内容は、下記である。

1. 自立分散型社会システムの導入促進に関する提言

  • エネルギー計画を考慮した都市計画の策定:自治体は、災害などの非常時でも事業継続に必要なエネルギー量を都市計画に盛り込む。エネルギー事業者は都市計画策定に参画し、行政と連携して事業を推進する
  • モビリティまちづくり:国は「モビリティまちづくり」の全体像と社会実装へのロードマップを示し、大学と研究機関は最先端研究開発を推進する。産業界は「モビリティまちづくり」に必要な共通プラットフォームを早期に中部圏で社会実装するとともに、新たな課題を把握・解決して国際標準獲得につなげる。小規模自治体などは、必要に応じて広域連携で一定以上の事業規模を持つインフラを維持する
  • 効率とレジリエンスを考慮した公共インフラ:民間の知見および技術を活用し、公益事業運営の効率化を図る。自治体は民間の知見および技術を支援し、国は治水対策における森林循環の有効性について意識啓発活動を展開する。産業界は木材活用に積極的に取り組む

2.モノの循環による適量生産・使い切りに関する提言

  • 製品設計段階からの循環型設計:製品設計段階から循環性を考慮する。国は小規模事業にも幅広く利用されるよう導入インセンティブが働く仕組みを構築し、支援する
  • リサイクル材の活用・部品のリユース:リサイクル材の品質や必要量について、需要と供給の均等を保つべく、動静脈産業間における情報共有の仕組みを確立することが重要だ。サプライチェーンを構成する産業界の各事業者は、デジタル技術やDXを活用した情報プラットフォームを構築する。国は、リサイクル材の品質に関する規格化を主導し、補助金などで支援する
  • 循環資源の回収:低コストで広域的な資源回収により、リサイクル事業を円滑に進め事業の競争力を高める。産業界は、製品ライフサイクルの各段階でトレーサビリティ確保に向けて情報を管理する。国は、リサイクルする資源の「逆有償」要件や広域認定制度の見直しなど、法を整備する。自治体は、一般廃棄物の地区内処理緩和運用などを実施する

サーキュラーエコノミー移行に向けて取り組むことは、資源循環技術を核とした新しい事業モデルで日本が「資源循環立国」として世界の主導権を握る機会でもあると中経連はみている。中経連は関係機関や企業などと連携し、リサイクル技術や先駆的な事業モデルを中部圏内外に広め社会実装を目指すとともに、国際標準獲得に向けて支援を続け、中部圏発の事業モデルが資源循環立国の構築に貢献するよう、取り組みを進めていく意向だ。

2023年3月、経済産業省は「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定。国内の資源循環システムの自律化・強靱化と国際競争力獲得に向けて、技術と規則のイノベーション促進および動静脈連携の加速を目指している。

【プレスリリース】提言書「自立分散かつ循環型社会の形成に向けて~『カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会の変革』を推進するために~」を発表(5/19)
【参照レポート】自立分散かつ循環型社会の形成に向けて ~「カーボンニュートラルの実現に向けた 経済社会の変革」を推進するために~
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