大日本印刷株式会社は10月11日、富士特殊紙業株式会社と有限会社クレエなど3社と共同で、分別廃棄可能かつリサイクル性の高い紙製ボトル「ēfbottle™」(富士特殊紙業株式会社と有限会社クレエが商標出願中)の開発を開始すると発表した。

同ボトルは、資源循環・温室効果ガス排出量削減・生活者と飲料各社とのコミュニケーション向上において、以下のように貢献するとしている。

  • 資源循環に貢献:ēfbottleは耐水紙の「外装」と、長期保存可能な「口栓付きパウチ」で構成されており、紙素材とプラスチック素材として分別廃棄できリサイクルしやすい。口栓付パウチをモノマテリアル(単一素材)で製造することで、プラスチック素材のリサイクル性向上に貢献する。PETボトルと比較して、約30%のプラスチック使用量を削減できる(720ミリリットルボトルの場合。同プロジェクト調べ)
  • 温室効果ガス排出量削減に貢献:ガラス瓶製造時と比べて、ēfbottle製造時のエネルギー消費量と温室効果ガス排出量を削減できる。ガラス瓶と比べて大幅に軽量化できるため、製品輸送時の車両などからの温室効果ガス排出量削減にも寄与する
  • 生活者と飲料各社とのコミュニケーション向上に貢献:紙製でありながらガラス瓶特有の曲線的形状を実現し、ボトル全面に印刷できるため、店頭で生活者の目に留まりやすい。デジタル技術を活かした印刷により、さまざまな用途に活用でき、生活者と企業のコミュニケーションを活性化させる。例)バリアブル商品、オリジナルデザインのボトル

ガラス瓶やPETボトルよりも環境負荷を低く抑え、生活者にとっての親しみやすさと利便性を向上させるべく、4社はēfbottleの共同開発に継続的に取り組んでいく意向だ。2023年春頃、日本酒や洋酒などの業界に向けた実証実験を実施する予定。なお、大日本印刷株式会社は2022年10月12日~14日に東京ビッグサイトで開催される「TOKYO PACK 2022(2022東京国際包装展)」に出展し、ēfbottleを参考出品する。

同ボトル開発の背景は、プラスチック汚染の問題とカーボンニュートラルや再資源化への世界的関心の高まりだ。プラスチック汚染の問題として、世界のプラスチックの9%のみがリサイクルされ、毎年1100万トンのプラスチック廃棄物が海洋に流出していることなどが報告されている。こうしたなか、日本政府も2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」を施行するなど、プラスチックの使用量削減やリサイクルを推奨し、使用済みプラスチックの資源循環を推進している。

ēfbottleの外装には耐水紙が使用される予定だが、プラスチック製容器包装を紙製容器包装に置き換えることについての懸念の声もある。環境NPOの加Canopyは、「使い捨てプラスチックによる汚染への対処は必要だが、紙製容器包装も環境に重大な影響を及ぼす可能性があり、現実的で永続的なソリューションの実装が不可欠である」との考えを示している。これについては、「環境保全の点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な責任ある森林管理の原則や基準である」FSC認証など、紙の原料調達において持続可能性をもたせることが問題解決に寄与できると考えられる。

飲料容器包装の環境負荷削減に向けてはリユース・リフィルなども推奨されており、ēfbottleなどをはじめ、ライフサイクル全体の環境負荷を考慮した環境配慮型の容器包装が開発されていくことが期待される。

【プレスリリース】耐水紙とパウチを組み合わせた分別廃棄可能な 環境配慮型紙製ボトル「ēfbottle」の共同開発を開始
【プレスリリース】富士特殊紙業が共同開発を開始
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*冒頭の画像の出典:大日本印刷株式会社