公益財団法人日本財団は7月20日、廃漁網由来の再生原料から製造した鞄の発表会と展示会を開催した。同取り組みは海洋プラスチックごみ削減を目的としており、廃漁網の資源活用促進により、海洋への不法投棄防止や回収を促す効果などが今後期待されるとしている。商品は、10月1日から豊岡鞄オフィシャルショップにて、実店舗とオンラインで販売される予定だ。

廃漁網由来の再生原料から製造した鞄(出典:公益財団法人 日本財団)

同発表会では、船舶係留用ロープのマテリアルリサイクルを実施しているリファインバース株式会社・廃漁網を原材料とする服飾資材を展開するモリト株式会社・鞄メーカーらがこれまでの取り組みや成果、および課題を紹介した。笹川陽平日本財団会長や小泉進次郎環境大臣らも登壇し、企業連携の重要性やアップサイクルへの期待について話した。

現在、漁網の環境中への流出が問題になっている。UNEP(国連環境計画)とFAO(国際連合食糧農業機関)は、毎年約64万トンの「漁網を含む漁具」が海洋へ流出していることを報告している(※)。2018年の影響評価によると投棄・紛失・廃棄された漁具は海岸に散乱するごみの27%を占めている。

こうしたことを背景に、7月21日には繊維商社の豊島株式会社と商品開発の株式会社SHINDOが、廃漁網を回収して繊維原料にする取り組み「UNTANGLE IT™(アンタングルイット)」に関するブランドパートナー連携を締結した。両社は、UNTANGLE ITに関わる新製品開発を推進して用途範囲を拡充し、UNTANGLE ITの繊維を用いた高品質のテープなどを展開して、生地・服飾副資材・アパレル製品を開発・生産していく意向だ。

SHIINDOが開発した、UNTANGLE ITを使用したテープ(出典:豊島株式会社)

漁具による環境汚染に対しては法整備も世界的に進められており、総括的な対応が求められている。欧州委は2021年5月、EUにおける持続可能なブルーエコノミーの新しいアプローチを提案し、漁具の設計の新基準策定などを求めた。同月、欧州委は使い捨てプラスチック製品禁止指令(2019年5月採択)に関するガイダンスを発表し、市場導入されている漁具と回収された廃漁具の監視・報告に関する実施決定を採択している。

※ Graeme Macfadyen, Tim Huntington, Rod Cappell,”Abandoned, Lost or otherwise Discarded Fishing Gear” UNEP, FAO 2009より

【プレスリリース】
棄てられる漁網を衣服の原料にするチャレンジ「UNTANGLE IT™(アンタングルイット)」豊島とSHINDOがブランドパートナー連携(豊島株式会社)
廃棄漁網から生まれた鞄をお披露目 「豊岡鞄」から10月1日(金)販売へ(公益財団法人 日本財団)
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*冒頭の画像は、廃棄漁網由来の再生原料から製造した鞄の発表会。左から鉢嶺氏、笹川氏、小泉大臣、由利理事長(出典:公益財団法人 日本財団)