伊藤忠商事株式会社はこのほど、廃タイヤ回収・加工事業会社大手の英Murfitts Group Ltd(以下、Murfitts)の全株式取得について基本合意した。

株式取得は、伊藤忠商事株式会社の事業投資先で英国最大手のタイヤ小売事業Kwik Fitと英国最大手のタイヤ卸事業Stapleton’s Tyre Servicesを展開するEUROPEAN TYRE ENTERPRISE LIMITED(以下、ETEL」)を通じて実施される。

下記は、Murfittsが展開する事業。

  • 英国で年2千万本相当(乗用車タイヤ換算)の廃タイヤを回収・加工し、リサイクル製品を販売している
  • 販売している製品は、競技場や舗道・遊戯場の表面、カーペットの下敷きやアスファルト代替といったさまざまな産業用途に使用され、世界中に輸出されている
  • 粒状にした廃タイヤを真空状態下で熱し、CO2を排出することなくカーボンブラック(※)・再生燃料といった付加価値の高い再生原料へ分解する独自の熱分解技術の開発・商業化に取り組んでいる。同取り組みは、廃タイヤから熱分解により生成した再生カーボンブラックを使用することでタイヤ製造におけるサステナビリティを促進する

英国全土にタイヤの物流網を抱えるETELによるMurfittsの株式取得は、回収・加工のさらなる拡大をもたらすとしている。伊藤忠商事株式会社は、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」の基本方針に『マーケットインによる事業変革』と『SDGsへの貢献・取組強化』を掲げている。2021年12月には、タイヤの主原料である天然ゴムのサステナビリティに焦点を当てた「PROJECT TREE」を公表した。Murfittsの株式取得により、廃タイヤ回収による廃棄物削減だけでなく、リサイクル製品販売を通してタイヤのサプライチェーン全体のサステナビリティへの貢献を目指す意向だ。

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBSCD)は、タイヤ業界全体のデータとして「回収された使用済みタイヤの用途」を次のとおり発表している。マテリアルリサイクル47%、熱回収20%、土木目的での利用・埋め戻し2%、その他(埋立など)31%で、約7割の使用済みタイヤがリサイクルされている。今後、リサイクル率のさらなる向上と、カーボンブラック再利用などのタイヤからタイヤへの水平リサイクル増加が望まれる。これらに加えて重要なのが、デジタルツイン作成やタイヤの軽量化など、設計・開発段階で原材料の使用量削減に取り組むことだ。上流と下流におけるさまざまな取り組みにより、タイヤ業界全体のサステナビリティが向上していくことが期待される。

※ カーボンブラック:タイヤに使用されるゴムに含まれる黒い炭素の粒で、タイヤの重量の3割を占める。ゴムの強度を高め、紫外線劣化防止効果も持つ

【プレスリリース】英国の廃タイヤ回収・加工事業会社Murfitts Group Ltdの全株式取得について
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*記事中の画像の出典:伊藤忠商事株式会社