公正取引委員会は、使用済みペットボトルのリサイクルに係る取引に関する実態調査を実施し、このほど調査結果を発表した。

日本のペットボトルのリサイクル率は約86%(2021年度)にのぼり、水平リサイクルに向けた取り組みが広がるなど、流通経路の変化や多様化が進んでいることなどを踏まえ、委員会は実態調査を実施。独占禁止法上および競争政策上の考え方を示すべく、取引の現状などを明らかにした。

調査は2023年2月から9月まで実施された。書面調査対象は、全市町村1741機関(回答数1391機関、回収率79.9%)、ペットボトル利用・製造など事業者1139名(回答者数749名、回収率65.8%)、再商品化事業者47名(回答者数42名、回収率89.4%)。ヒアリング調査は、次の計106名に実施した。市町村50名、収集運搬・中間処理業者5名、再商品化事業者27名、ペットボトル利用・製造など事業者8名、使用済みペットボトルの排出事業者6名、事業者団体など5名、有識者5名。

主な調査結果は、以下のとおり。

使用済みペットボトルは、ほとんどの市町村において分別収集後に再商品化されている。再商品化の流れは2つで、「指定法人ルート」と「独自処理ルート」だ。指定法人ルートは、市町村が唯一の指定法人「日本容器包装リサイクル協会」と契約して実施するもの、独自処理ルートは市町村が指定法人を経由せず使用済みペットボトルを事業者に引渡すものだ。

環境負荷削減などに向けて、事業者が市町村と協働して使用済みペットボトルを調達する例も増えており、現在指定法人ルートが約3分の2、独自処理ルートが約3分の1となっている。こうした動向を受け、日本容器包装リサイクル協会が市町村や事業者に独自処理を躊躇させたり関与を制限したりするなど、独占禁止法上問題となるおそれのある行為があったことも確認された。

これまで、使用済みペットボトルは金銭の支払いにより処理が委託されていたが、現在は多くが有償で取引されている。資源として売れている状態であるという状況の変化や、新たなリサイクルの取り組みにより、流通経路の変化や多様化が進んでいると考えられる。

キャップやラベル、飲み残しなどの異物の残存や汚れの程度を下げることで、リサイクルコストは減少する。経済分析によると、回収される使用済みペットボトルの品質が高い方が引渡価格が高くなる傾向がみられる。そのため、使用済みペットボトルの価値向上とリサイクルの効率化には、事業者が創意工夫することと、各消費者がリサイクルの取り組みの重要性を理解し、適切に分別して排出することが重要だ。

独占禁止法および競争政策は、事業者間の競争を促進することで資源の効率的な利用を促し、新技術などのイノベーションを創出することから、環境政策などを補完するとともに、グリーン社会実現に間接的に貢献する。

今後も、公正取引委員会はグリーン社会実現の促進を目的とする取り組みを実施していく意向だ。加えて、使用済みペットボトルのリサイクル市場の動向について注視し、独占禁止法に違反する行為がある場合には厳正に対処していくとしている。

2022年4月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された。同法において、容器包装再商品化法の仕組みを活用したプラスチック使用製品(ペットボトルを含む)廃棄物の再商品化などにより、市町村および再商品化事業者が効率的に再商品化する仕組みを導入することを目指している。世界においても、プラスチック汚染への取り組みが加速しており、2024年末までの国際条約案の完成が計画されている。

【プレスリリース】(令和5年10月16日)使用済みペットボトルのリサイクルに係る取引に関する実態調査について
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