本漆金継ぎ(きんつぎ)サービスを展開するkNotPerfect株式会社(以下、kNotPerfect)はこのほど、金継ぎ認知度調査を実施し、その結果を公表した。金継ぎは、壊れてしまった陶器を漆(うるし)などの自然の材料を使って修復する日本の伝統的修理技法だ。金継ぎによる修理では陶器の割れ・欠け・ヒビの傷を活かし壊れた器をより芸術的で価値あるものにして長く使えるため、SDGsの観点からも着目されていると同社はみている。

新型コロナウイルス感染症蔓延により日本人のおうち時間が増加し、金継ぎがメディアで多く取り上げられ人気が出たとkNotPerfectは認識している。こうしたことを受け、2019年10月に行った金継ぎ認知度調査を2021年5月に拡大実施し、日本人の意識変化を明らかにした。

調査対象条件

調査対象は、以下のとおりだ。

東京金継ぎ認知度調査2019(前回)
  • 2019年10月3日、東京在住の女性111人を対象にオンライン調査
  • 回答者年齢分布:10代 1%、20代 18%、30代 38%、40代 28%、50代 12%、60代 3%、70代 1%
全国金継ぎ認知度調査2021(今回)
  • 2021年5月26日、日本全国の女性233人を対象にオンライン調査
  • 回答者年齢分布:10代 1%、20代 26%、30代 38%、40代 25%、50代 10%、60代以上 1%

全国金継ぎ認知度調査2021の結果

調査結果について、同社は見解とともに以下のように発表した。

問1. あなたは、割れたり、欠けたり、ヒビが入ったりしているが、捨てられずにとってある思い入れのある器を持っていますか?(高額なものに限らず)

破損してしまったけれど思い入れがあって捨てられずにとってある器を持っている人の割合は、全体で38%であった。年齢が上がるほどその割合は高く、50代では半数以上の人が該当した。20代でも4人に1人以上、30代では3人に1人以上が該当し、若い層でも愛着のある器を持っていることが明らかになった。

モノを大切にするSDGsの考え方が若年層にも浸透してきているのではないかと同社は分析した。

問2. 金継ぎを知っていますか?
  • 「金継ぎを知っていて、金継ぎをしたこと(または金継ぎ修理依頼をしたこと)がある」1.7%
  • 「金継ぎを知っているが、金継ぎをしたこと(または金継ぎ修理依頼をしたこと)がなく、やってみたい」34.3%
  • 「金継ぎを知っているが、金継ぎをしたこと(または金継ぎ修理依頼をしたこと)がなく、やってみたいと思わない」20.2%
  • 「金継ぎを知らない」43.8%

前回調査では、金継ぎを知っている人は41%、知らない人は59%だった。今回の調査では、金継ぎを知っている人は56%、知らない人は44%で、知っている人が約15%上昇し半数以上の女性が知っているという結果となった。

年齢別では、今回の調査は20代で43%、30代で56%、40代で66%、50代で65%と、年齢が高くなるほど認知度が高かった。前回の調査結果と比べると、20代など若い層での認知度が大きく伸びたとしている。金継ぎを知っている人で金継ぎをしたことがある人は2%だったが、金継ぎをやってみたいと答えた人は34%にのぼり、金継ぎへの潜在需要があると同社は考える。

問3.大切にしていたけれど破損してしまった器を自分で金継ぎして直せるとしたら、どのような要素が魅力的に感じますか?これまで自分で金継ぎをしたことがある人は、やってみようと思った一番の理由にもっとも近いものを教えてください。
  • 「自分で自分の大切な器を修復でき、また使えるようになるため」45%
  • 「ただ直すだけでなく、破損した部分を活かして、美しくなるため」28%
  • 「金継ぎを通して、日本の伝統文化に触れられるため」11%
  • 「自分で金継ぎすることに魅力を感じない」10%
  • 「金継ぎ自体に魅力を感じない」6%

問1において、壊れたけれど捨てられずに思い入れのある器を持っていると答えた人のうち、金継ぎに魅力を感じている人は88%だったが、思い入れのある器を持っていないと答えた人も82%が金継ぎに魅力を感じていることがわかった。金継ぎをまだ知らない人も金継ぎの存在を知れば、魅力を感じる可能性が高いのではないかと同社は考える。

問4. 今までに金継ぎをしたこと(または金継ぎ修理依頼をしたこと)がない理由にもっとも近いものを教えてください。
  • 「金継ぎの修理依頼は、何を基準にどの職人を選べばいいかわからないため」23%
  • 「いままで金継ぎに魅力を感じていなかったため」20%
  • 「金継ぎのやり方を教えてくれる人がいないため」18%
  • 「壊れた器にお金をかけたくないため」13%
  • 「手間と時間がかかるため」13%
  • 「自分で直せるか不安があるため」12%

金継ぎ教室に通ったり、家で自分で金継ぎをしたりする人が増えているが、自分で金継ぎに挑戦するのが難しい人に、気軽に修理依頼できる環境を最初につくることで、金継ぎがより身近に感じられるかもしれないとしている。

問5.金継ぎには昔ながらの自然の材料のみで時間をかけて行う「本漆金継ぎ」と、食品安全法の兼ね合いで食器には適さない材料や合成接着剤を用いて簡単に早く仕上げる「簡易金継ぎ」があります。あなたはどちらを選びますか?理由とともに教えてください。

「本漆金継ぎ」を選んだ人が79%で、その理由として本漆金継ぎが食器に使えて安心・安全であることを挙げた人が多かった。他にも、伝統技法・本格的な技法に魅力を感じていたり、大切な器なので本漆で少しでも綺麗・丁寧に直したいという思いがあることがわかったとしている。最初に簡易金継ぎをやってみた後で、本漆金継ぎに挑戦したいという声もあった。

調査結果を受けた同社の今後の取り組み

同社は金継ぎによって、壊れたモノが新しいお気に入りとなって生涯使っていけることをより多くの人に広め、接点を作っていきたいとしている。

これまで主に金継ぎを自分で体験できるサービス(金継ぎ教室やキット販売)を展開してきたが、SDGsへの関心の高まりや同調査結果を踏まえ、壊れた器のリサイクル(金継ぎアップサイクルプロジェクト)や金継ぎ修理をより低価格で依頼できるサービスにも注力していく意向だ。今後も器を修理することの敷居を下げて、金継ぎを広め、持続可能な社会に貢献していきたい考えだ。

現在、食器の耐久性向上や回収・再資源化が注目され始めており、例えば洋食器メーカーのニッコー株式会社は2021年4月、食器のサーキュラーエコノミーを推進する研究開発プロジェクト「NIKKO Circular Lab(ニッコー・サーキュラー・ラボ)」を開始している。

【プレスリリース】おうち時間増加とSDGsの高まりで「金継ぎ」の認知度50%超え!全国金継ぎ認知度調査2021の結果を大公開!
【参照サイト】つぐつぐ
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*記事中の画像の出典:kNotPerfect株式会社