株式会社講談社と株式会社集英社、および株式会社小学館の出版社3社はこのほど、大手総合商社の丸紅株式会社(以下、丸紅)と出版流通における2021年内の新会社設立に向けて協議を開始したことを発表した。

2020年の出版売上は1兆6,168億円(全国出版協会・出版科学研究所調べ)となり、2年連続で前年を越えた。しかし、近年出版界は構造的な課題を抱え続けており、各部門においての改善が急務とされていると出版3社は考える。そうしたなか、3社は長年出版界と取引があり、他業界におけるサプライチェーン改革の実績を持つ丸紅と共に、出版流通における課題解決を目指して新会社を設立し、取り組みを開始する予定だ。

新会社による主な取り組み内容は、以下の2つである。

  1. AIの活用による業務効率化事業:書籍・雑誌の流通情報の流れを網羅的に把握し、AIを活用することで配本・発行などをはじめとする出版流通全体の最適化を目指す
  2. 電子タグ(RFID)活用事業:RFIDに埋め込まれた各種情報を用いて、在庫や販売条件の管理・棚卸しの効率化や売り場における書籍推奨サービス・万引き防止にわたり、システムを構築して運用することを検討する(2のシステムは1の仕組みの「最適化」の精度向上につながると3社はみている)

上記の取り組みを丸紅と共に実施していくだけでなく、できる限り多くの書店・販売会社・出版社が、この新会社が提供する新たなサービスを利用することを望んでいると3社は明らかにした。出版流通全体の最適化により、環境負荷削減も期待される。

丸紅グループは2021年2月、2030年までの使い捨てプラ使用量半減を目指し、イオンと共同で「ボトル to ボトル プロジェクト」を開始した。同プロジェクトにおいて、丸紅は幅広いネットワークを利用して回収・収集運搬・再商品化までの流通システム構築などを担当している。RFIDについては、経済産業省が2020年にコンビニエンスストアにて、2021年1~2月にはネットスーパーと消費者の家庭において、RFIDを活用した食品ロス削減に関する実証実験を実施しており、結果公表が待たれるところだ。

新会社が提供するサービスの利用から生まれる利益を業界内の関係各社に広く共有することで、その結果が1店でも多くの書店・1社でも多くの出版社、そして何より1冊でも多くの出版物を手に取る読者の利益に資するものと3社は確信していることを公表している。3社は全国の書店経営が健全化することを第一に考えており、出版流通全体が生まれ変わることで読者が店頭で魅力ある出版物と出合い、快適な読書環境を続けていくには新会社の取り組みが必要であるとみており、出版界に限らず、広く理解と協力を呼びかけている。

【プレスリリース】出版 3 社が丸紅と新会社設立に向け協議を開始
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