経済産業省製造産業局自動車課が事務局を務める「蓄電池のサステナビリティに関する研究会」がこのほど開催され、「中間整理案」が発表された。

同研究会の目的は、サステナブルな蓄電池サプライチェーン構築に向けて検討することだ。早稲田大学理工学術院教授/東京大学大学院工学系研究科教授の所千晴 氏を座長とする同研究会は、一般社団法人日本自動車部品工業会の伊藤肇 技術部長や一般社団法人電池サプライチェーン協議会の森島龍太 業務執行理事など8名の委員で構成される。日本自動車輸入組合、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、国土交通省、環境省がオブザーバーを務める。同研究会は2022年1月から開催されており、今回は第3回となる。

「中間整理案」は、「蓄電池産業を取り巻く状況」「取り組みの方向性」「当面の取り組み」から成る。

  • 「蓄電池産業を取り巻く状況」・・・自動車の電動化と蓄電池の需要増加、サステナビリティに対する社会的要請、海外の動向
  • 「取り組みの方向性」・・・基本的な考え方、課題と対応の方向性、検討の方針
  • 「当面の取り組み」・・・カーボンフットプリント、人権環境デューデリジェンス、リユース・リサイクル、データ連携

検討の方針と当面の取り組みの詳細は、以下のとおり。

検討の方針

これまでの研究会で議論された内容、欧州電池規則などの海外の動向、他産業や業種横断的な検討状況などを踏まえ、次のような全体方針に沿って検討手順や検討内容の精査を進めていく。

  • 企業のESGへの配慮に関するさまざまな努力が適切・公平に評価されるものであること。例)長寿命・易リサイクル設計製品の開発、非化石エネルギーの活用、ESGへの配慮
  • 他国において検討が進められている制度との調和を意識し、国際的議論を積極的に牽引するものであること
  • 経済活動の実態(サプライチェーン上での企業間の関係、技術水準や経済合理性を踏まえた経済活動)と効率的・効果的な制度構築の均衡を意識したものであること。例)企業間の取引関係に配慮しつつ、必要な情報を効率的に把握・管理するデータ流通の仕組みの構築
  • 他製品や物資横断的な検討との整合性を確保したものであること。例)経済産業省に「サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会」を設置し、人権デューデリジェンスに関する業種横断的なガイドラインの策定に向けた検討を実施

当面の取り組み

カーボンフットプリント

  • 算定の対象範囲・活動量の測定・排出原単位・比較の単位・関係者間での情報交換などについて、議論を深めていくことが必要
  • 令和4年度から事業者の協力のもと、カーボンフットプリントの算出を試行し、規則の具体化に向けて取り組む

人権・環境デューデリジェンス

  • 「サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会」の検討内容を踏まえ、蓄電池のサプライチェーンの特性を踏まえた具体的な議論を深めていくことが必要
  • 令和4年度から事業者の協力のもと、人権・環境デューデリジェンスを試行し、実施方法の具体化に向けて取り組む

リユース・リサイクル

  • 使用済みの車載用蓄電池の流通実態を踏まえ、検討を進めることが必要
  • 今後、流通実態の把握を進め、使用済み電池の回収力強化・リユース電池市場の活性化・リサイクル基盤の構築に向けた取り組みについて検討する

データ連携

  • データ連携基盤の構築は、自動車に限らない業種横断的な課題であるため、業界横断的な対応と自動車・蓄電池などの個別の使用事例における具体化を並行して進めていくことが必要
  • 日本でも、蓄電池のカーボンフットプリントなどについて検討を進める

世界では電池や重要な原材料に関連する規制が整備されつつあり、EUでは現行の電池指令が改正され、2022年内にも新電池規則として可決される予定だ。今回の研究会では、こうした他国における制度との調和の重要性と方法に関する検討、および官民連携でスピード感を持って検討していくことが大切であると強調された。今後、同研究会は中間整理案を具体化し、今夏には最終取りまとめをする計画だ。

【参照サイト】第3回蓄電池のサステナビリティに関する研究会
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