西松建設株式会社は1月29日、生コンクリート(生コン)工場で発生する回収骨材を100%使用したコンクリートを、粗骨材として自社施工の建設現場に適用する取り組みを発表した。これは、建設現場で余剰となり戻ってくるコンクリート(残コン・戻りコン)の有効活用を目的としたものであり、資源循環型社会の構築を目指す施策の一環である。
日本国内の残コン・戻りコンの量は、総出荷量の3〜5%に相当する約2.1〜3.5万m3だと言われている。建設現場では、数量通りの生コン打設が難しく、余裕をもったコンクリートの発注が行われるためだ。残コン・戻りコンの削減は、建設業界における重要な課題の一つとされている。
西松建設は、コンクリート打設数量予測システムの開発やBIMの活用などにより、残コン・戻りコンの発生抑制に取り組んできた。しかし、完全にゼロにすることは難しく、今回、一般社団法人生コン・残コンソリューション技術研究会(RRCS)に参画し、回収骨材の活用を推進することとなった。
回収骨材とは、残コン・戻りコンを洗浄して得られる骨材であり、通常の骨材と見た目や強度に差異はないといわれている。生コン製造に関わるJIS規格(JIS A 5308、ミクストコンクリート)では、建築物の基礎や主要構造への回収素材の使用は、5%もしくは20%を置換率の上限として定められている。しかし、回収骨材を使用するメリットや需要が低いとされ、従来あまり普及せず、使用されない回収骨材は産業廃棄物として処理されてきた。
今回の取り組みでは、建設現場で仮設的に使用する捨てコンクリートや土間コンクリートなど、建築基準法上の指定建築材料が必ずしも求められないコンクリートに対し、回収骨材を粗骨材として100%使用することとした。
同社は、学校法人玉川学園と株式会社久米設計の協力のもと、2024年7月から11月にかけて約300m3の捨てコンクリートを打設。生コン1m3あたり約900kgの粗骨材を再利用し、総計約270tの廃棄予定粗骨材が資源として再活用された。同社によると、回収骨材を粗骨材として100%使用したコンクリートは、通常の骨材を使用したベースコンクリートと比べて、フレッシュ性状および圧縮強度が同等であると確認されたという。
今回の取り組みにより、建築主や設計事務所、施工会社に対して回収骨材の有用性を周知する契機となることが期待される。今後、西松建設は本技術のさらなる普及と環境配慮型技術の提案を進め、建設業界の環境負荷低減に向けた取り組みを強化していく方針だ。
【プレスリリース】粗骨材に回収骨材を100%使用したコンクリートを施工中の建設現場に適用
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