電気通信事業の仏オレンジはこのほど、携帯電話の長寿命化を目指すべく、欧州全土で「Re」イニシアチブを開始すると発表した。

オレンジによると、世界では毎年15億台以上の携帯電話が製造されているが、そのうち1〜2%のみがリサイクルされている。この状況を改善すべく、オレンジは2020年10月に「リサイクル」「返品」「リファービッシュ」の3つの柱に基づいた「Re」イニシアチブを開始した。同イニシアチブは携帯電話の環境負荷とリサイクルについての一般認識を高め、携帯電話を長寿命化させることを目標としている。

事業活動において、オレンジはサーキュラーエコノミー移行に向けた取り組みを強化し、2021年10月には同イニシアチブの4番目の柱として「修理」を定めた。「Re」イニシアチブの概要は、以下である。

  • リサイクル:機能しなくなったもしくは現金価値のない携帯電話をリサイクルする。フランスでは、リサイクルで生じるすべての利益はホームレスと貧困解決に取り組むNGOの仏Emmaüs Internationalネットワークに寄付される
  • 返却:オレンジの顧客は、店舗で携帯電話を持ち込むと即時割引もしくは商品券が提供される。フランスでは返却ごとに2ユーロがEmmaüs Internationalネットワークに寄付される
  • リファービッシュ:新品の携帯電話を購入する代わりに、Recommerce・Intancia・Cordon・Renewdなどの中古携帯電話取り扱い企業と提携して、リファービッシュ携帯電話を販売している
  • 修理:フランスのオレンジ530店舗において顧客は携帯電話の修理を依頼し、オレンジが回収して修理する。平均24時間以内に修理され、顧客は電子メールとSMSで修理を追跡でき、修理品は12カ月保証される

オレンジは、使用済み携帯電話の回収率(リサイクルと返品)の2025年における目標を30%に設定している。同イニシアチブがフランスで開始されて以降、回収率は13.4%(2020年)から22.3%(2021年)に上昇した。これまでに、合計約190万台の携帯電話がリサイクル・返品された。

こうしたフランスでの実績を受け、オレンジが事業展開する欧州のすべての国で同イニシアチブを2022年に開始・拡張すると発表した。今年初頭にルクセンブルク・ベルギー・ポーランドで同イニシアチブを開始しており、今後数カ月以内にモルドバ・スロバキア・ルーマニア・スペインで同イニシアチブを開始する予定だ。

現在、欧米をはじめとする国々で「修理する権利」への関心と規制強化の動きが高まっていることを受け、アップルマイクロソフトサムスン電子などの民間企業も自己修理プログラムの開始を発表している。オーストリアは、家庭で一般的に使用される電気・電子製品の修理代の50%を政府が補助するキャンペーンを開始した。今後、製品の長寿命化を促進する「修理」をはじめとする廃棄物削減に向けた取り組みが進められていくことが期待される。

【プレスリリース】Orange launches the “Re” initiative in Europe during the 2022 ChangeNOW international summit
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*冒頭の画像の出典:オレンジ