大成建設株式会社(以下、大成建設)はこのほど、建設副産物回収システムの運用スキームを再構築したと発表した。

建設副産物の資源循環を目指して2017年に大成建設が導入した「建設副産物巡回回収システム」に、日本通運株式会社(以下、日本通運)が保有する静脈物流の知見と技術を適用する。大成建設が公表した内容は、以下のとおり。

「建設副産物巡回回収システム」は運搬効率向上を目指し、建材メーカー各社の端材運搬ルールを共通化して複数現場を同一車両で巡回するシステムだ。これまで、大成建設は同システムを運用するとともに、広域認定制度(※)を利用してきた。

通常、建設現場で発生する建材端材は中間処理場で分別処理されるが、これらは分別できてもリサイクルが困難で、大半は埋立処分されている。そのため、建材端材をリサイクルするには、メーカーの製造工場で建材の原料などに再資源化できる広域認定制度の利用が最も有効であるとされている。

「建設副産物巡回回収システム」は運搬効率やマテリアルリサイクルを向上させたが、繁忙期と閑散期による物流調整や車両の安定確保など、改善すべき課題も残っていた。そこで今回、これらの課題を解決するべく、「建設副産物巡回回収システム」に日本通運の物流サービスを組み込み、運用スキームを再構築した。新しい運用スキームでは、日本通運の専用回収容器「NRボックス」と物流ネットワークを活用する。

新しい運用システムの特徴は、次のとおり。

  1. 効率的な巡回回収。日本通運のネットワークと静脈物流の知見・技術を活用:建材端材の分別・回収・運搬において、建材メーカー各社は日本通運を共通の運搬会社に指定している。そのため、運搬効率の向上に向け、各種品目・建材端材を同一車両で運搬するとともに、日本通運の物流ネットワークと静脈物流の知見・技術を活用する
  2. NRボックスの利用により、他の建設副産物混入を防止:日本通運が開発したキャスター付き専用回収容器「NRボックス」を利用する。これにより、各専門工事業者は他の建設副産物の混入を防止し、建材端材を安全かつ確実に管理できる
  3. 建設副産物の巡回回収・運搬時のCO2排出量や処分費を大幅削減:建材端材の処理において、従来の「建設副産物巡回回収システム」を運用して巡回回収した場合、中間処理場に運搬する通常処理と比較して、車両運搬によるCO2排出量を約6割、処分費用も最大約6割削減できる。運用スキーム再構築で効率化が見込まれるため、CO2排出量と処分費用のさらなる削減が期待できる


今後、大成建設は日本通運と連携して同システムを安定運用するとともに、より多くの建設現場で展開していきたい考えだ。

建設業界は世界のバージン材の約半分を消費し、炭素排出量と固形廃棄物排出量の約40%を占めるなど、大きな環境負荷が指摘されている。大成建設と日本通運が今回発表した建材端材の資源循環の取り組みなどを参考に、建物のライフサイクルの全段階において循環型の取り組みが促進されていくことが期待される。

※ 広域認定制度:建材メーカーなどが環境大臣の認定を受けて廃棄物となった自社製品を広域的に回収し、製品原料などにリサイクルまたは適正処理する制度

【プレスリリース】「建設副産物巡回回収システム」の運用スキームを再構築
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*冒頭の画像は、建設副産物巡回回収システム概要図。(記事中の画像の出典:大成建設株式会社)