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サーキュラーエコノミーのための『文化醸成』に寄与するであろう日本文化・哲学とは?〜Circular Cafe & Bar Vol.9レポート〜  

サーキュラーエコノミーのための『文化醸成』に寄与するであろう日本文化・哲学とは?〜Circular Cafe & Bar Vol.9レポート〜 

Circular Economy Hub 編集部では、第一木曜日夜に「Circular Bar」、第三木曜日昼に「Circular Cafe」として、コミュニティ会員限定のオンライントークの場を開催。(詳細はこちら。)話題提供を行うゲストや編集部メンバーがテーマ設定の理由や問いを冒頭に投げかけ、その後参加者で自由に意見交換を行うという流れで進行しています。

【話題提供パート】サーキュラーエコノミーのための「文化醸成」に寄与するであろう日本文化・哲学とは?

今回話題提供を行った編集部メンバーはオランダ・アムステルダム在住の西崎こずえさんです。海外から日本文化を見ると、サーキュラーエコノミーに欠かせないリペアやリユースにつながる文化を醸成するのためのヒントが多く存在しているといいます。

注目される日本文化・哲学とは

日本独特の精神や哲学の一部は、海外でも広く知られています。その一部が紹介されました。

「侘び寂び」

慎ましく簡素なもの。凹みや凹凸は欠陥ではなく、自然の創造物と理解し受け入れること。

「経年優化」

時とともに物は劣え価値がなくなるとする経年劣化ではなく、物の変化を慈しみ使い続ける考え方。

「もったいない」

物の価値を十分に生かしきれておらず、無駄になっている状態を惜しむこと。

「金継ぎ」

欠けた食器を漆で継ぎ、金などの金属で装飾を施して仕上げる。傷跡を無かったことにするのではなく、新しい魅力として欠けてしまったその歴史ごと受け止めて愛でる。

事例紹介

HARAHACHIBU(腹八分)

ヨーロッパ最大の設計者たち祭典、ダッチ・デザイン・ウィーク(DDW)の一角に、この言葉が掲げられ、12のブースからなるHarahachibu Villageが設立された。主催者は日本に訪れた際に「お腹が苦しくならなるまで食べず、八割がベストの状態」を意味するこの言葉を学び、着想を得た。八割で満足する心を持てば、余った二割を人に分け与えることもできる。そして、設計者としても全てを自分がつくるのはなく、八割にとどめ、残りはみんなでつくるという余白を楽しむ。「Harahachibu」という言葉にそんなメッセージが込められた。

「間」ルーム

ロッテルダムのCICイノベーションセンターに作られた「間」ルーム。あえて用途が決められていない空間を作ることで、ウェルビーイングやクリエイティブの余白を作ることに寄与している。

上記のような事例のように、日本独特の文化や哲学はサーキュラーエコノミー移行に欠かせないリユースやリペアの文化を育てることに寄与できるのでは、という問いが投げかけられました。

【参考】

意見交換パート

日本文化や哲学に内在するサーキュラーエコノミーの移行に寄与できるようなエッセンスについて、参加者によって意見が交わされました。

和室と布団

  • 和室という空間は、畳んで収納できる布団を利用することで、昼間は別の用途に空間を利用できる。空間を一つの目的ではなく有機的に活用するサーキュラーエコノミー考え方に通じる。
  • ベットではできない布団の打ち直し。布団はメンテナンスし、長く使うことができる。野菜の屑を糠床に入れる、お鍋の最後の雑炊など、最後まで「使い尽くす」という思想もサーキュラーエコノミーに通じている。

足るを知る

  • 自分の祖父や父はもったいない精神が強い。クオリティに拘らず、物を長く使う習慣が身に付いている。お金があるなしに拘らず、生活は質素に心を気高く保つという「清貧」の精神や「足るを知る」ということを実践しているように感じる。

「カイゼン」の精神

  • トヨタ式「カイゼン」のように、一人の労働者単位でできることを、できる範囲で実践する。お金をかけないだけでなく、リソースも身の丈でできることをしていくという考え方は参考にできる。
  • 良い和歌は誰が作ったものであっても平等に扱う万葉集。現場レベルで良いアイデアは取り入れていくボトムアップの考え方に通ずる。身分や年齢に関わらず収録されていたことでもわかるように、昔から実践されていた日本らしい考え方といえるのでは。

生きがい

  • 海外に住んでいると、「生きがい」という考え方が素晴らしいといわれることがある。人生や日々の暮らしの中に、小さくても「甲斐」を見出すことが日本人らしいと捉えられるそうだ。
  • 海外では、日本人は自然と調和して、精神世界を大切にしているイメージがある。サーキュラーエコノミーや循環型システムなど新しい考え方を根付かせる時に、日本独特の言葉や文化を活用することで自然に受け入れることができるようだ。そういった意味でも日本的な文化や哲学をサーキュラーエコノミーの文化醸成に向けて、取り入れる意味があるのでは。

一方で、一方的に日本文化が素晴らしいと称賛することを懸念する意見や、高度成長期以降に変化する社会や価値観についても意見が交わされました。

社会と価値観の変化

  • 日本独特の文化や哲学がある一方で、100年先ではなく、5年~10年先の経済性が優先される傾向は強い。対前年比を越えなければいけない、右肩上がりの成長が当たり前の前提であることがサーキュラーエコノミー移行には障壁となっていると感じる。
  • 経済大国に成長したのは高度経済時代の功績だか、その過程で経済界の「当たり前」が形成されてしまった。実績があるからこそ、当時の考え方に固執するのかもしれない。
  • 人材育成についても、同じ研修を受けたから同じ能力・適性を持った人間として見られるのではなく、同じインプットでも同じアウトプットとは限らない。その人がどんな経験を持っているか、何にこだわりを持っているかを評価されることが必要と感じる。日本企業の評価基準ではすくいきれていない価値があるかもしれない。

最後に、日本の社会と歴史にあった考え方を、ビジネスやその他の場面でいかにして活かしていけるのかという問いに話が及びました。

文化や価値の捉え直し

  • 武家の時代の忠誠心のように、働きがいも双方向に想いがあるから成り立っている。企業が仕事を与えているから、従業員や下請け会社が従わなければいけない、やりがいを感じなければ、ではなく、想いの部分では常に対等であることが必要なのでは。
  • 日本では「就職」することが「結婚」と同義だと捉えられてきた側面がある。古い考えといわれることもあるが、押し付けにならなければ前向きな関係性とも捉えられる。職場の人間関係が情緒的で密接であることは、日本の会社の良さでもある。先輩や会社に恩義を感じる、恩返しをしたいという気持ちが文化として醸成されるという良い面もある。
  • ソーシャルな課題に取り組めることは自分に余力があるということ。明日食べることを気にしないでもよい状態を社会でつくることや、それぞれが人や社会の利益を考えられるような余白や間をつくることは大切かもしれない。

編集後記

最後に話題提供者の西崎さんは、「私たちの文化や哲学の中には大切なものがたくさん埋まっている。どうやったらその大切なものを発掘して、ポジティブなものとしてリユースしていけるのか、考えていきたい」と話していました。

大きな思考転換や意識変革が必要な時に、全く新しい考え方を受け入れることは簡単ではありません。

過去を必要以上に称賛することや、今の社会や価値観を悲観的に見るのではなく、自分たちのもともと持っていた文化や哲学に置き換えて考えることで、サーキュラーエコノミーの考え方や取り組みが受け入れやすくなり、文化として醸成がしやすくなる。それが文化や価値観の循環にもつながってくるのだと、皆さんとの意見交換で感じました。

Circular Cafe&Barは、コミュニティ会員限定の企画です。会員は、会話に参加してもラジオとして聴くことも可能です。過去のアーカイブもご覧いただけます。

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