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インドネシアのゴミ問題を解決する。ソーシャルスタートアップ「Waste4Change」の挑戦 

インドネシアのゴミ問題を解決する。ソーシャルスタートアップ「Waste4Change」の挑戦

中国、アメリカ、インドに次ぎ世界第4位となる2.6億人の人口を抱え、経済成長率も5.5%と急速に発展を遂げている新興国、インドネシア。いま、東南アジアでもっとも注目されているこの国では、どんどんと豊かになる暮らしの代償として、新たな社会課題が表面化している。それが、ゴミ問題だ。

インドネシアでは年間6,500万トンもの固形廃棄物が排出されており、そのうち約7割がそのまま埋め立てられている。リサイクルやコンポスト(たい肥化)に向かうゴミはわずか7%しかなく、残りの24%は違法に焼却・廃棄されているのが現状だ。ゴミの8割以上は分別されておらず、せっかく分別された残り2割のうち半分も、結局はゴミ輸送の過程でミックスされてしまう。また、インドネシアは年間187トンものプラスチックごみを海に排出しており、海洋汚染を深刻化させている。

昨年にはゴミで埋め尽くされて川面が見えなくなっているCitarum川が世界中の報道機関のスポットを浴び、「世界で最も汚染された川」として不名誉な形で認知度を上げることになった。

ゴミで埋め尽くされたCitarum川 Image via Shutterstock

そして、今こうしている間にもジャカルタ近郊のブカシにある埋め立て地にはジャカルタ市内から毎日1,000台ものトラックが24時間体制でゴミを運搬しており、東南アジア最大のゴミ山としてその規模を拡大し続けている。

ジャカルタ近郊、ブカシにあるゴミ山

どう考えても持続可能とは言えないこのゴミ問題の解決に向けて取り組んでいるのが、「インドネシアをゼロ・ウェイストにする」という目標を掲げて2014年に設立されたソーシャルスタートアップ、Waste4Changeだ。

Waste4Change の施設

日々深刻化、複雑化しているインドネシアのゴミ問題を解決するためには、単発の取り組みではなく総合的なアプローチが必要となる。そこで、Waste4Changeでは「Consult(コンサルティング)」「Campaign(キャンペーン)」「Collect(回収)」「Create(創造)」という4つの「C」にかかわる事業を展開している。

責任ある廃棄物管理の推進に向けた企業向けのコンサルティングや、企業・住民・学校向けのトレーニングなどに加え、独自の廃棄物回収システムを構築してゴミの回収に取り組んでいるほか、有機ゴミのコンポスト(たい肥化)やリサイクルにより回収したゴミを資源に変える事業など、グローバル企業とも連携しながら多角的に取り組みを進めることで根本的な問題解決を目指している。

Waste4Change のゴミ処理場でゴミを分別するスタッフたち

生ごみのコンポスト施設

Waste4Changeを創業したのは、若手起業家、Sano氏だ。創業のきっかけは、2005年に起こった、ゴミ山の一つが崩壊して麓の村がなくなるという忌まわしい事故にさかのぼる。

同氏は、「140名以上の死者を出したこの悲しい事故の後も、別の場所にゴミを持って行き、ゴミ山を形成し続けているのがインドネシアの現状だ。インドネシアでは、”ゴミ処理”といっても実際にはほぼ何もせずにゴミをそのまま最終処分場に持っていき、ゴミの山を築くだけだ」と語る。

悲しい惨劇が起きた後も政府は抜本的な対策をとることもなく、人々の意識も変わらない。企業はコスト面を理由に分別をしないゴミ回収業者を利用し、結果として多くのゴミがリサイクルされることなく埋め立て地へと直行し、ただ山積みにされていく。

ゴミ山にはゴミを運んでくるトラックで渋滞ができている。

毎日、毎分と積み重なっていくゴミの山を前にすると、その問題の深刻さと解決の難しさに絶望感すら覚えてしまう。しかし、そのような壁を前にしても、Sano氏の情熱が途絶えることはない。

一刻を争う問題の解決に向けて、Waste4Changeではユニークな新規事業を続々と仕掛けている。その一つが、市街地のレストランやショッピングモールに分別用のゴミ箱「Dropping Box」を設置し、ゴミを回収するという事業だ。

CSRなどに力を入れているグローバル消費財メーカーらからスポンサードを受けて現在100箇所でトライアルを実施しており、今後さらに100箇所追加で設置される予定とのことだ。ターゲットはしっかりゴミを分別し、信頼できる回収業者に収集してほしいと考えている環境意識の高いユーザー層だ。

レストランに設置されたDropping Box

これまで、インドネシアの消費者の中には仮にゴミを分別したとしても回収業者が輸送の過程で一緒にしてしまうため、分別をする意味がないと諦めている人々も少なからずいた。Dropping Boxは、そうした人々のためのシンプルだが新しいソリューションとなる。

また、Dropping Boxを設置する店舗にとっては、新たな顧客がゴミを捨てるために店舗を訪れるというメリットがある。現在、Dropping Boxの設置箇所はウェブ上にマッピングされており、ユーザーが近くのDropping Boxをすぐに探せる仕組みとなっている。テクノロジーをうまく組み合わせている点も新しい。

地図上からDropping Boxの場所が分かるようになっている。

さらに、Waste4Changeはシェアリングエコノミーのモデルを活用した新たなゴミ回収システム構築の可能性も模索している。具体的には、ライドシェアリング事業者と連携し、ドライバーがユーザーの自宅までゴミを回収しに来てくれる仕組みを創るというアイデアだ。インドネシアではライドシェアリングサービスが新たな交通インフラとして浸透しつつあり、この仕組みが成功すればより効率的にゴミを回収できるようになる。

ジャカルタ市内を走るライドシェアリングサービス、Grabのドライバー Image via Shutterstock

インドネシアのゴミ問題というと遠い外国の話のように聞こえるかもしれないが、決してそうではない。実は、私たちの暮らす日本からも、インドネシアに大量のゴミが輸出されているのだ。これまで日本の廃プラスチックの最大の輸出先は中国だったが、中国が2017年に環境への悪影響が大きい資源ごみの輸入を禁止したことで、日本のゴミは東南アジアに向かうことになった。日本の廃プラスチックのインドネシアへの輸出量は2017年には前年比6.6倍となる2,700トンへと大きく増加している。現在はプラスチック輸入法規制がさらに厳格化されつつあるが、それでもインドネシアが直面するゴミ問題の責任の一端は、私たち一人一人にもあることも忘れてはならない。

【参照サイト】Waste4Change
【参照サイト】東南アジアでも廃プラスチックの輸入禁止へ

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事となります。

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