豊田通商株式会社(以下、豊田通商)とグループ会社のCFAO SASは、共同設立したMobility 54 Investment SAS(以下、モビリティ54)を通じて、英国とケニアで電池のリビルト・リユース事業を展開するAceleron Limited(以下、アクセロン社)の第三者割当増資を引き受け、2021年12月に出資した。

現在、カーボンニュートラル実現に向けた世界的な取り組みに付随して電池の需要が増加しており、アフリカでの電池市場は年間11%の成長が予想されている。しかしながら、市場に粗悪品も出回っており、良品廉価な製品の導入が期待されるとともに、電池の適切な処理方法の整備が求められていると豊田通商は認識している。

アクセロン社は持続可能なリビルト・リユース電池を開発すべく、2016年に英国で設立されたスタートアップだ。豊田通商によると、製品の特長は新興地域でも簡単に組み立てと修理ができることだ。通常の電池は基本的に分解できない仕組みになっているが、電池内部のセルを圧着したアクセロン社の電池は安全に固定・分解でき、寿命を迎えた電池も一部のセルを交換するだけで再度使用できる。これにより、製品を長寿命化できるとともに、ユーザーは買い替えコストを抑えられる。

2021年、アクセロン社はアフリカに進出し、リユース電池の製造を開始した。現在はケニアを中心に、主にソーラーホームシステム(※)の廃棄電池からセルを調達し、電動マイクロモビリティ向け電池や定置用蓄電池を製造している。

今回の出資は、アフリカでのカーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みの一環であると豊田通商グループは発表している。同社が注力する電池の3R(リビルト・リユース・リサイクル)事業の基本戦略でもある、地産地消型サプライチェーンの構築を実現する取り組みでもある。アフリカで持続可能な電池事業を確立することで、再生可能エネルギーや電動モビリティの事業展開を加速させていきたい考えだ。

豊田通商グループはモビリティ54を通じて、アフリカで革新的な技術・サービスを展開するパートナー企業に積極的に投資し、事業の拡大やサービス拡充への支援、既存事業との相互シナジーを創出していくことで、より包括的にアフリカの社会課題の解決に取り組んでいく意向だ。廃棄電池からセルを調達して分解可能な新しい電池を製造するアクセロン社への豊田通商による出資が、地産地消型サプライチェーンの構築とサーキュラーエコノミーへの移行に貢献していくことが期待される。

背景にある電池需要の急増については、いくつかの組織が懸念を示している。欧州グリーンディールが推進するデジタル化と輸送部門における電動化が採鉱を拡大し、供給不足や破壊的な採鉱事業活動につながり、化石燃料の採掘による環境負荷と同様の現象を引き起こすと欧州環境局は報告書で発表した。世界経済フォーラムが刊行したグローバルリスク報告書2022年版は、気候変動対策における急速な環境政策の採用は自然に負荷をかける可能性があると公表した。鉱山全般での労働条件や鉱山開発による環境やコミュニティへの影響をはじめとする問題も、英ガーディアン紙などが報じている。電池需要の急増に対して、技術革新を進めつつ、環境的影響・社会的影響・経済的影響・科学的分析を十分に考慮した包括的な取り組みがあらゆる組織に求められている。

※ ソーラーホームシステム:特に未電化地域で近年需要が伸びている小型太陽光発電機

【プレスリリース】ケニアでバッテリーのリユース・リビルト事業を展開するAceleron社へ出資~アフリカでのカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー実現に貢献~
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*冒頭の画像は、アクセロン社の電池(出典:豊田通商株式会社)