サーキュラーエコノミーは、環境負荷と経済成長をデカップリング(分離)させ、持続可能な成長を実現するための新たな経済モデルとして近年注目を集めている。EUでは2015年12月に、「サーキュラーエコノミーパッケージ」が採択され、経済成長政策の中心に据えられている。

日本でも、サーキュラーエコノミー促進に向けた取り組みが進められており、2020年の経済産業省の循環経済ビジョン2020の策定に加え、環境省・経済産業省・日本経済団体連合会は2021年、循環経済パートナーシップ(J4CE)を創設。J4CEは、国内企業を含めた幅広い関係者におけるサーキュラーエコノミー移行に向けた理解醸成・取り組み・官民連携強化の促進を目的としている。2022年9月には、循環経済アプローチ推進による循環型社会の方向性を示すべく、環境省が「第四次循環型社会形成推進基本計画の第2回点検結果(循環経済工程表)」を策定した。

サーキュラーエコノミー推進でぶつかる壁。Learning by Doingの有用性とは?

サーキュラーエコノミー移行には、メーカー・小売・回収・リサイクル企業・消費者の協働が不可欠とされている。サーキュラーエコノミー推進を通じて、さまざまな連携が生まれ、地域のつながりの再構築やオープンイノベーションにつながることが期待されている。

しかしながら、サーキュラーエコノミー移行に向けて、「どのような取り組みが必要なのか」「どこから始めたらよいか」という壁に直面している組織も多いのではないだろうか。そこで今回は、地方自治体・あらゆる規模の企業・NPOなど、さまざまな組織がサーキュラーエコノミー移行に向けた取り組みをすぐに開始できる実験・協働プラットフォームを4つご紹介する。

実験・協働プラットフォーム4選

エレン・マッカーサー財団のプログラム:サーキュラーエコノミーを包括的に推進し、学習プログラムも提供

2010年に設立されたサーキュラーエコノミー推進組織であるエレン・マッカーサー財団は、情報発信・世界的ネットワークの構築・学習コンテンツの提供など、世界経済全体へのアプローチに注力している。エレン・マッカーサー財団は、次のような実験・協働プラットフォームを提供している。

  • エレン・マッカーサー財団ネットワーク:現在、世界の企業300社以上が参画。意見交換などを通じ、サーキュラーエコノミー移行に向けた活動強化を目指している
  • 循環型公共調達ツール:公共調達における循環型の仕組みを明示し、各自治体が必要に応じて柔軟に採用できる枠組みを提供。各過程で検討すべき問題・他の地方自治体の循環型調達事例・資源についての情報も盛り込んでいる
  • A Future Without Waste:7~12歳向け学習プログラム。玩具製造・販売大手のレゴグループ(本社デンマーク)と共同開発した。サーキュラーエコノミー・リユース・リサイクル・公害汚染・より良い将来への設計などをテーマとしている
  • Circular Economy Lesson Plan:11~14歳向けサーキュラーエコノミー授業計画。梱包資材大手の英DSスミスと共同開発した。サーキュラーエコノミーの意義と重要性について子供たちに伝え、参加を促すことを目的とする
  • A Lesson for Earth Day:14~16歳向けサーキュラーエコノミー学習ツール。気候変動とその影響について基礎知識のある生徒を対象とし、スライド・教師用の指導書などの教材から構成される
  • Circular Buildings Toolkit:エンジニアリング企業の英アラップと共同開発した循環型建物ツールキット。建物の所有者・投資家・不動産開発業者がサステナビリティ規制の導入に備えて評価損の可能性を抑えること、および組織のネットゼロ目標達成に必要な運用の変更を目指している
  • Upstream Innovation:プラスチック容器包装ソリューションガイド。廃棄物の排出を防ぐべく、新素材・製品設計・事業モデルの開発など、製品やサービスを設計段階で再考することを目指す。110以上のイノベーション事例を含む多様なツールキットを提供している
都市のCE移行支援オンラインプラットフォーム「Ganbatte

Circle Lab for Citieプログラムが運用開始したサーキュラーエコノミー移行支援オンラインプラットフォーム。Circle Lab for Citieプログラムは、持続可能な都市開発に取り組む2500以上の地方自治体のグローバルネットワークであるICLEI(Local Governments for Sustainability)と蘭Circle Economy、蘭メタボリックとエレン・マッカーサー財団が2021年に開始し、スイスに本拠を置くMAVA財団が資金提供している。

5つの工程から構成され、サーキュラーエコノミー移行に向けた行動を起こすことを目的とする。現在、世界の6000以上の都市の部門別消費・排出量・雇用に関するデータの洞察と、サーキュラーエコノミー移行への取り組みを開始するための知識およびツールを提供している。

グーグルのCE移行支援プログラム。スタートアップ・NPO向け

技術を活用してサーキュラーエコノミー移行に取り組むアジア太平洋地域および北米のスタートアップとNPOを対象とするプログラム

10~15の組織から成るグループごとに実施され、1対1および1対多数の学習セッションを組み合わせた、グーグルの技術者と外部専門家による指導と技術支援を含む仮想プログラミングをグーグルが提供する。各組織への支援を強化するべく、専任マネージャーが参加組織を指導する。人工知能(AI)・機械学習・地理空間・グーグル クラウド プラットフォームなどの技術的課題に関する指導とプロジェクト支援に加えて、製品設計・顧客獲得・リーダーシップ開発・専門家主導のサーキュラーエコノミーに関する取り組み強化・ワークショップ・最先端の研究に焦点を当てる。申し込み受付は2022年11月14日まで。

ドーナツ都市計画実現に向け社会を巻き込む「Doughnut Economics Action Lab(DEAL)」

英国に拠点を置くNPOのドーナツ・エコノミクス・アクション・ラボ(DEAL)は、教育者・コミュニティ・都市・企業・政府機関やその他賛同する人に開かれたオンラインコミュニティ。プラネタリーバウンダリー(地球の限界)内ですべての人の需要を満たせるよう、「ドーナツ経済」への移行に向けて行動を起こし体系的変化を生み出すことを目指す。

DEALオンラインプラットフォームには、5大陸の100カ国以上から1000を超える組織が参加している。40以上のテーマごとのツールや話題を公開し、メンバーディレクトリ・最新ニュース・教育機会の提供・政策なども掲載している。2021年3月には、日本でワークショップを開催した。

まとめ

今回、自治体・あらゆる規模の企業・NPOなど、さまざまな組織がサーキュラーエコノミー移行に向けた取り組みをすぐに開始できる実験・協働プラットフォームをご紹介した。多くの組織がこうしたプラットフォームに参加することで、さまざまな連携が生まれ、包括的なサーキュラーエコノミー移行が加速していくことが期待される。

サーキュラーエコノミー推進の参考事例をもっと知りたい方に、「欧州サーキュラーエコノミー政策・事例レポート2022」をご案内しております。本レポートは、EUのサーキュラーエコノミー政策(規制)、フランス・オランダ・ドイツ・英国の政策、4カ国で実際にサーキュラーエコノミーを推進する組織の取り組みに焦点を当てました。今回ご紹介した事例の一部を含めた36団体も掲載しており、貴組織でのサーキュラーエコノミー推進に役立つ内容となっています。詳細はこちら