三菱重工グループの三菱造船株式会社(以下、三菱造船)・川崎汽船株式会社(以下、川崎汽船)・一般財団法人日本海事協会はこのほど、陸上プラント用のCO2回収小型装置を実船に搭載し試験運転および計測を実施することを発表した。

「CC-Ocean(Carbon Capture on the Ocean project)」と名付けられた同プロジェクトは、洋上でのCO2回収装置利用の検証を目的とする。三菱重工グループは、川崎汽船運航の東北電力株式会社向け石炭運搬船「CORONA UTILITY」へのCO2回収小型装置の搭載工事が完了したと明らかにした。

2020年10月に日本政府は「2050年温室効果ガス実質排出ゼロ達成」を宣言し、カーボンリサイクルなどの革新的イノベーションが達成への重要な要素であることを示した。これを受け、経団連は2020年11月に新たな成長戦略である「。新成長戦略」を発表し、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)などのイノベーションを国家プロジェクトとして官民連携で強力に推進することを表明した。現在、清掃工場の排ガスからのCO2回収実証実験やCO2吸収型コンクリートの製造など、CCUSの取り組みが国内で進められている。

同プロジェクトは、国土交通省海事局の補助事業「海洋資源開発関連技術高度化研究開発事業」の支援を受けて実施される。同船の航海には三菱造船の専門技師が同乗し、CO2回収小型装置のコミッショニングを行い、洋上での運転性能を評価し分離・回収したCO2を分析する。2021年度末まで乗組員が同装置を運転し、安全性および操作性を評価して、洋上でのCO2回収小型システムとしての実用化に向け川崎汽船と共に実証試験を実施する。

東北電力株式会社向け石炭運搬船「CORONA UTILITY」(出典:三菱重工グループ)

三菱重工グループによると、今回の取り組みは洋上での実航海における実証試験としては世界初となる。同取り組みで得られた知見は、洋上設備や船舶の排ガスからCO2を回収する技術・装置の開発につながると三菱重工グループはみている。回収されたCO2は人工合成燃料の原料としてもリサイクル利用が期待され、温室効果ガスの排出削減にも大きく寄与できるとしている。

今後も三菱造船は、船舶および洋上設備からの温室効果ガス排出削減の課題解決に貢献していくとともに、三菱重工グループのエナジートランジション(低環境負荷エネルギーへの転換)として同プロジェクトに取り組んでいく意向だ。

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*冒頭の画像は、石炭運搬船に搭載完了したCO2回収小型装置(出典:三菱重工グループ)