株式会社リコーはこのほど、教育現場で出た廃プラスチックの一部をリサイクルし、3Dプリンター材料として活用する実証実験を鎌倉市教育委員会と共同で開始した。

鎌倉市立小学校16校の授業で児童が使用したプラスチック製のアサガオ鉢を回収し、リコーがフィラメントに加工して、3Dプリンターが設置された中学校に3Dプリンターの材料として提供する。提供した再生フィラメントは、中学校の美術の授業での作品や学校用具など校内で使用するものの作製など、さまざまな用途で活用する予定だ。


リコーが考えるアサガオ鉢からの再生フィラメントを含むリサイクルの全体イメージ

これまで廃棄されていたプラスチックを3Dプリンター材料として活用し、身の回りのモノに変換することで、プラスチックリサイクルの重要性に関する学びと、アップサイクルおよびデジタル化への取り組みを支援することが同実証の目的だ。3Dプリンター材料は輸入品の割合が多かったが、高付加価値と地産地消の考えを促していきたいとしている。


鎌倉市立手広中学校での体験の様子

同実証開始の背景は、STEAM教育促進だ。STEAMとは、科学・技術・工学・芸術・数学の5領域を統合的に学習する教育理念で、株式会社リコー傘下のリコージャパン株式会社はSTEAM教育推進のため、2021年から「STEAM Lab実証事業」にパートナー企業として参加している。同事業は、主催のインテル株式会社とパートナー企業が連携して、実証校におけるSTEAM Lab環境構築に必要な周辺機器やソフトウェアなどを提供し、STEAM教育のカリキュラム開発・実践を支援することを目的としている。鎌倉市は2022年4月から2024年3月まで同実証地域の一つに選定されており、リコージャパン株式会社は鎌倉市立手広中学校に3Dプリンターなど必要な環境を提供・導入している。

今後の展開として、株式会社リコーはワークショップの開催を検討している。再生フィラメントで作製された水受けを使い、水力発電に使用する水車の組み立てから発電までの体験や、新興国とオンラインでつないで交流する講義の実施および各地での展開の可能性を精査している。欧州地域においても、3Dプリンター材料を使った価値提供およびピコ水車を活用したワークショップを拡大していきたい考えだ。

同実証で再生フィラメントを利用した中学生は、「アサガオの鉢が、こんな風にリサイクルされることに驚いた」「やさしい色で、地域の人にも見てもらいたくなった」と感想を述べている。今後も同実証およびワークショップ開催などをきっかけに、生徒たちがアップサイクルおよびデジタル化について学びを深めていくことが期待される。同時に、教育現場ではさまざまなプラスチックが教材として使用され廃棄されていることから、素材の再考も求められる。

【プレスリリース】教育現場におけるプラスチックのリサイクル・再利用の実証実験を開始~STEAM*1教育促進を目的に、再生プラスチック製3Dプリンター材料を活用する環境を提供~
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*冒頭の画像は、手広中学校での体験の様子(記事中の画像の出典:株式会社リコー)