Circular Economy Hubでは、世界のサーキュラーエコノミーをけん引する英国エレン・マッカーサー財団が10週間にわたって提供したオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」の内容をご紹介してきました。全世界から約2000人が参加したプログラムにリアルタイムで参加したCircular Economy Hubメンバーの西崎こずえさん(アムステルダム在住)に、このプログラムを通じて得られた世界のサーキュラーエコノミーの最前線の動向や10週間にわたったプログラムの裏話を聞かせてもらいました。また、本記事のインタビューの終わりに、学んだ内容をゲストスピーカーとともに考えるセミナーのご案内をさせていただいております。(聞き手:Circular Economy Hubメンバー 木村麻紀)

全12回レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール
第10回「CEOが語る壮大な見取り図
第11回「再生する農業
第12回「サーキュラーエコノミーと気候変動、より良い復興のために

Q:今回なぜ参加しようと思ったのですか?

A:サーキュラーエコノミーの概念については知っているつもりでしたが、体系立てて学んだことがなく、「知っているようで実はよく知らない」かもしれないという気持ちがどこかにありました。

そんな時に、サーキュラーエコノミーの“震源地”とも言えるエレン・マッカーサー財団がサーキュラーエコノミーの基礎から理解するための学習プログラムを始めると聞き、すぐにやってみたいと感じました。サーキュラーエコノミーの基本だけでなく、様々な産業でどのような環境・社会課題があり、サーキュラー化するとどのように変わるのかを理解できる点も魅力的だと感じました。

サーキュラーエコノミーで世界を作り変える時代へ

Q:全12回の中でも、特に印象的だった回やテーマはありましたか?

A:第1回の「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?」は、頭を殴られたような衝撃でした。社会の中で「なぜだろう?」と感じていたことが、すべて仕組み上の欠陥であり、経済という仕組みそのものを作り変える必要性があるということを非常によく理解できました。

同じ理由で、第10回の「CEOが語る壮大な見取り図」も印象的でした。世界じゅうで、官民が同時にやり方を変えなければならない理由がよく理解できました。また、大きなプレイヤーが動き始めた今だから、さらに経済的メリットを伴うからこそ急激に変わっていくと感じました。

いくつかの異なる産業を取り上げた中では、第8回の「食のサーキュラーエコノミー」は特に気づきが大きいものでした。講義を受けるまでは食のサーキュラーエコノミーというと食品ロス対策、食の廃棄物から何を作るかというイメージが強かったのですが、栄養分・炭素を循環させる存在としての食というのは、目からウロコが落ちるようでしたね。

これまで、単作は土地が痩せることや、森の多様性は一度失われると再生されるまでに長い年月がかかることなどは知っていましたが、点と点とがつながるというのはこういうことだというぐらい、すべてが複雑に入り組んでいて影響しあっており、サーキュラー化していかないと、もうどうしようもない段階に来ていることを理解できました。

全体を通して優劣をつけられないほど、どれも素晴らしく気付きに満ちたセッションでした。全10週、12回の講義を通しで受講したからこそ感じたことは、サーキュラーエコノミーは当初私が考えていたよりもずっと広く複雑なものだということです。

ある回でゲストスピーカーの方が「今はこの社会のすべてを作り変えることができるワクワクする時代」と表現しましたが、この表現が今の私のサーキュラーエコノミーについての思いに最も近いと感じます。今までの当たり前をすべて作り変えなければならない時代、誰も正解を知らない中で、各産業や各レイヤーのプレイヤーたちが情報を開示し合い、協力し合いながら、創造性を用いて新しい道を作る素晴らしいチャンスが広がっているのですから。

講義&Slackでの意見交換で学びが増幅 

Q:今回、世界中から2000人が受講したそうですが、どのような形で進んだのですか?

A:今回のプログラムの流れとしては、まず毎週月曜日にその週の講義に向けたウォームアップクエスチョン「月曜日の問い」が出され、参加者は予習を兼ねて自分の意見をチャット上に投稿します。

当日の講義は、司会進行役が毎週異なるゲストスピーカーを招きながら話してもらう形式でした。参加者から出た「月曜日の問い」に対する答えをいくつか紹介し、そこから本題に入ります。ゲストはエレン・マッカーサー財団のメンバーが中心で、講義中はチャットからいつでも質問できます。その週の講義は、データ化完了次第動画で視聴可能になりました。

さらに講義内容の理解を深めるために、ラーニング・トリオといって参加者同士3人でグループを作り、週一回30分程度オンラインでその週の講義について意見を交わすという仕組みがありました。私はスイスにいる、元々P&G社でサステナビリティ戦略に携わり現在は独立したコンサルタントの男性と、アムステルダムの企業で物流を担当する女性とトリオを組みましたが、それぞれの視点からのサーキュラーエコノミーについての課題感やチャンスなどについて話をすることができたので、ここからも大きな学びを得ました。コースが終わった今でも、毎月1回オンラインでミーティングを続けています。

講義の中で出た質問やキーワードの数々は、「知っているつもり」の状態からさらに考えさせられるものばかりでとても刺激的でした。皆さんはこれらの問いかけ、どう思われますか?

  • 取り組みが広がる食品ロスだけど、それだけでいいの?
  • 肉食はダメなの?
  • すぐに壊れる製品を作る企業はモラルがないのか?
  • 大量に買っては捨てる消費者が悪いのか?
  • 100%リサイクルをうたうファッションブランド、でも「ダウンサイクル」されているかもしれないって本当?
  • 環境に負荷をかけた企業は何をしても信用されないのか?
  • ペットボトルと水筒、本当に環境負荷が大きいのはどっち?

Q:多様なメンバーとの学びはどのような点で良かったですか?

A:今回はヨーロッパやアフリカ、北米、中南米、インド、オセアニアなど、実に様々な国と地域からの参加者がいたので、それぞれの地域の実情や政治的・文化的視点から議論を交わせたのは、特に素晴らしいと感じました。講義の中だけでは足りずに、参加者や主催者らがSlackのチャットでも議論を続けられたのもとても良かったです。

Slack上では、地域やテーマ毎にチャンネルを作り仲間を募ることができるため、サーキュラーエコノミーについて理解を深めるための読み物を紹介し合うチャンネルや、B2Bに特化したサーキュラーエコノミーへの移行をサポートするサービスについて議論するチャンネル、アパレルや農業などの産業ごとのチャンネル、サーキュラーエコノミーの求人情報を掲載するチャンネルなど、実に様々なトピックについて議論や情報交換の場がありました。複雑なサーキュラーエコノミーという仕組みを理解する上で非常に有意義でしたね。

参加者ネットワークがサーキュラーエコノミー推進のハブに

Q:オンラインとはいえ10週間にわたって密度濃く一緒に学び合った仲間、その後も交流が続いているそうですね。

今回の参加申込者は4000人、うちアクティブな参加者は約2000人おり、そのうちの多くとLinkedInを通じてネットワークを作れたことは非常に大きな副産物でした。

また、アムステルダムを拠点にしている参加者を誘ってSlack上にチャンネルを作り、議論を交わしていましたが、コースが終わってからは月に一回カジュアルにサーキュラーエコノミーについて話すミートアップを行うことにしました。他の皆さんもこのプログラムでの学びやつながり、議論を続けたいと感じていたからこそ実現したのだと思っています。

第一回はアムステルダムのサーキュラーエコノミーの実験エリア「De Ceuvel」で、仕事終わりに集まる予定です。サーキュラー家具製造に取り組む人やサステナブルファッションブランドの戦略責任者など、サーキュラーエコノミー先進都市アムステルダムならではの参加者と出会い、コミュニティをつくってつながっていけることは、予期していなかった素晴らしい展開ですね。

Circular Economy Hub 編集部では、9月1日(火)19時からアムステルダムの西崎こずえさんと結んで、記事ではお伝えしきれなかったサーキュラーエコノミーの最前線についてお伝えしながら、CE Hub読者の皆さんと交流するオンラインセミナーシリーズを始めます。どうぞご期待下さい!

【連続セミナーのご案内】 エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミーの全体像

上記でお伝えしたように、英国サーキュラーエコノミー推進機関のエレン・マッカーサー財団は、2020年4月15日から10週間にわたり、サーキュラーエコノミーを学ぶオンライン学習プログラム「From Linear to Circular」を開催し、Circular Economy Hub編集部メンバーも参加しました。

そこで、プログラムで学んだ、サーキュラーエコノミーの基礎と各業界の動向をお伝えするとともに、各業界のゲストよりサーキュラーエコノミーの取り組みを紹介していだだく予定です(初回除く)。参加者の皆さんと一緒に学びながら、サーキュラーエコノミー移行への道筋を考えていきましょう。本セミナーへのお申込は下部に記載しております。

開催スケジュールとゲストスピーカー

全回19時〜21時を予定しています。
※各回の詳しい内容やゲストのプロフィールは別途ご案内する予定です。
※上記インタビューで登場した西崎こずえ(アムステルダム在住・Circular Economy Hub編集部)が全回スピーカーとして登壇します。

第1回:9月1日(火)「サーキュラーエコノミーとは?概念とビジネスモデル」

スピーカー:Circular Economy Hub 編集部 西崎こずえ

第2回:9月8日(火)「サーキュラーデザイン」

ゲストスピーカー:東洋製罐グループ(※登壇者調整中)

第3回:9月29日(火)「プラスチックのサーキュラー化」

ゲストスピーカー:
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
アシスタントコミュニケーションマネジャー 新名 司 氏
R&D ヘアR&D シニアスペシャリスト-パッケージ 板垣 篤史 氏

第4回:10月13日(火)「都市(自治体)とサーキュラーエコノミー」

ゲストスピーカー:
北九州市環境局環境産業推進課 課長 園 順一 氏
企画調整局SDGs推進室 次長 上田 ゆかり 氏

第5回:10月27日(火)「サーキュラーファッション」

ゲストスピーカー:株式会社三陽商会 事業本部 エコアルフビジネス部 企画課長 下川 雅敏 氏

第6回:11月10日(火)「食の循環化と環境再生型農業」

ゲストスピーカー:※現在調整中

第7回:11月24日(火)「建築とサーキュラーエコノミー/全7回のまとめ」

ゲストスピーカー:株式会社乃村工藝社 加藤 悟郎 氏、吉田 敬介 氏、小糸 紀夫 氏

開催概要

当日の流れ

  • 19:00~:オープニング(5分)
  • 19:05~:Circular Economy Hubメンバーによる解説(30分)※初回のみ60分
  • 19:35~:ゲストスピーカーによる活動紹介(30分)※初回除く
  • 20:05~:質疑応答/パネルディスカッション(30分)
  • 20:35~:次回告知&クロージング(5分)
  • 20:40~:ブレイクアウトルームによるネットワーキング(20分)

参加費用

ご関心のある回を選択できる各回チケットと、全7回分チケットをご用意

  • 各回チケット(1回分):3,000円
  • 全7回チケット:18,000円

定員

各回50名(※先着順)

会場

オンライン(オンライン会議ツール「Zoom」を利用)

こんな方におすすめ

  • サーキュラーエコノミーの基礎について学びたい方
  • サーキュラーエコノミーの概念をおさらいしたい方
  • 所属組織内でサーキュラーエコノミーを推進する立場にある方
  • サーキュラーエコノミーに関する新事業を立ち上げたい方
  • サーキュラーエコノミーに取り組む方々とのネットワークづくりをしたい方
  • 上記に関わらず、サーキュラーエコノミーに関心のある方ならどなたでも

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